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それはまるで人間のようにのeyeのレビュー・感想・評価

それはまるで人間のように(2019年製作の映画)
3.7
それはまるで人間のように(2020)

妙にインパクトがあるこのタイトルに惹かれ
あらすじを知らずに観に行ってきた

映画は二面性が映し出す表裏一体の世界観

右手の「人差し指」を2回トントンと鳴らすと創造を現実化(具現化)させることができる

人間でも金魚でも

「中指」を2回トントンと鳴らすと何でも消去することができる

人間を超えた存在のように振る舞う鈴木は主に私欲に特化しつつ能力を使用している

そしてコミュニケーション力の乏しいニート

パートナーであるハナも鈴木に依存するように狭いアパートの一室で生活している

物語のベースには "金魚" の存在がある

"金魚" 自体がフナの突然変異を人が作り出しきたという人為・作為部分

そして人間が突然神のようなチカラを手にするという突然変異の要素を組み合わせている

お伽話のようにファンタジックは元より
SFテイストも交えつつ

人間味のベースは失われることなく
逆に人間色をどんどん強めに残していく

非日常感があるにも関わらず

鈴木が働き始めたことから関係性が変化して
どんどんリアルな日常の方向に帰結していく

楽しさの裏に寂しさがあり

空間の均一
一瞬の歪み
破壊と再生
死と生

現実の反対に非現実な要素がある

相手を信頼すること
分かり合うこと
心の捉え方

相手を映す鏡に自分が映っていく

何でも思い通りになったらいいし
その方がラクだし 嫌なことはしたくない

自由の中にある不自由さも描かれている

能力は時として享楽を映すも虚無にも導いていく
そもそもの根底にある心情は

『寂しさ』
『人への不信頼感』

であって拭きれない部分がラストに向けて高まっていく

相手を深く信じきれず感情の不安定さを描き出すストーリー展開は監督のイマジネーションの根幹にあたるのではないかなと感じた

そして今年5月に急逝されたユミコテラダンスさんの生きた証がスクリーンに映されて良かった
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