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あの頃。のtkykのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
3.0
前半のアイドルとの出会いからハマっていくまでの過程はリアルで良かったが、後半にかけて、アイドルオタクである背景が薄まっていく感じがして、失速している感じがした。
前半では普通の青年でも沼にはまり込み、周囲から特異な視線を受けるような存在になること、その特殊な世界に理解や興味を示す人がちゃんといる事が描かれていた分、特異な世界への理解者になり得るはずの靖子の描写がもう少し必要な気がする。
靖子は元々ハロプロに興味を示していたにも関わらず、結局釼の誘いを断って別の男と付き合うようになるだけだと、単純にオタクである釼に魅力を感じずに離れていっただけのように見え、折角特殊な世界にのめり込んだ人とそれ以外の人々との接点になり、剱が靖子を通じて普通の社会とどう携わるようになるかを描けると思っただけに物足りなかった。
後半に進むにつれ、この映画の方向性というかメッセージがぼやけていく感じがした。題名が「あの頃。」である事からも何かに熱中していた時期を経て、自分を確立していく物語だと思っていたが、いまいち登場人物の成長や変化、葛藤が無いように感じ、物足りなかった。
登場人物達が歳を重ねて、このままオタクを続けるのか、それとも社会に順応するべきなのか等、あるべき姿を模索してる描写が個人的に欲しかった。
小泉以外のオタクが変化している描写がナレーションで済まされたのは残念だった。後半では急にハロプロの映像やオタクの描写が少なくなっていたが、本当なら徐々にアイドルから離れていくはずであり、唐突に変化した感じがした。
さらにあらすじでは釼は大学院受験浪人していると書かれていたが、勉強する場面は無く、バンド練習していたので釼が目指すものはあらすじとは違ってバンドマンなのかと思った。その割には釼にとってのバンドが彼の本当に目指すもののようにも見えなかった。もし彼があるべき姿、そうなりたいものがバンドマンであるならもっとバンドの描写が欲しかったし、オタク仲間とバンドを組むのは蛇足だと思った。
一方で小泉は最後の最後までアイドルが自分の拠り所であることが描かれていて良かった。
一番残念に思ったのはナレーションが邪魔だった点であり、いちいち分かってることを説明していて説明過多は否めなかった。そのせいで中盤の遂に推しと握手する場面での心の声の効果が薄まったように思う。
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