おりひめ

耳をすませばのおりひめのネタバレレビュー・内容・結末

耳をすませば(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

物語 10点
配役 10点
演出 8点
映像 9点
音楽 10点
---合計47点---

ジブリ版アニメが有名な少女漫画を実写化し、かつ主人公達の10年後をオリジナルストーリーで描いた作品。
原作は未読だしアニメ版に思い入れも無いが、本作は凄く好きだ。演出に癖があり、特に中学生時代の雫の台詞や演技にわざとらしさを感じる部分もあったが、子供らしさとも受け取れた。(それを言うなら聖司なんてキャラクター設定からしてわざとらしいし笑。)何よりエピソードに無駄が無く、10年前と10年後を並行して描き、織り交ぜる構成が上手かった。雫も聖司も、夕子も杉村も、中学生時代と10年後の配役に全く違和感が無く、過去と現在の場面転換を自然に魅せていた。
そして、この物語には『カントリーロード』ではなく『翼をください』が相応しい。歌詞が雫や聖司の心情に合っていて、劇中での使われ方がとても良かった。映画館の音響で聴く価値のあるアレンジも素晴らしかった。

「夢は形を変えて育っていく」という作品のテーマが爽やかで素敵だ。そして10年間お互いを支えにしてきた雫と聖司、二人の関係性も。夢を諦めようとしていた雫が、聖司からの手紙で再び筆を執ったように。行き詰まっていた聖司が、雫と共に演奏した『翼をください』をきっかけに音楽の楽しさを思い出し、彼女の隣で新たな夢を育みたいと思ったように。大人になったからこそ見える景色を大事にしつつ、大人になっても変わらない気持ちを大切にして。何よりも、その時の自分の心の声に耳をすませて素直に生きようと、前向きになれる作品だ。

作品自体は聖司から雫へのプロポーズで幕を閉じ、かつ直前に雫が書き上げた物語のタイトルが『耳をすませば』であるという王道中の王道な結末である一方で、雫のイタリアへの旅のきっかけとなった園村とは、和解はしたが担当編集には戻らなかった。この、全てを安易な解決に落ち着かせないところが誠実で好感を持った。

私は嫌な人間なので、雫に振られて絶望する聖司とか、彼がサラをバッサリと振る場面が見たかったが(笑)、聖司の中で雫は確固たる存在で、自分がこれを言えば彼女は絶対に戻って来ると分かっているあの手紙が憎らしい。彼の雫に対するストーカー気質は大人になっても揺るがない。雫が本気で聖司に愛想を尽かしていたら、彼女の命が危なかったと思うので正直結末には安心した(笑)。

50点満点ではないが、オールタイムベストには絶対入る傑作です。勿論Blu-ray購入しました。

個人的に、いつかヴァイオリンを習うのが夢であったがチェロでも良いな。


※2022年10月15日に初鑑賞。その後、16日と20日、11月23日(終映日)にも鑑賞し、合計で4回劇場に足を運んだ。
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