ちろる

ほんとうのピノッキオのちろるのレビュー・感想・評価

ほんとうのピノッキオ(2019年製作の映画)
4.0
カルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』を原作とした作品。
ディズニーアニメで観たピノッキオとはもちろん違う、原作を読んだことないけどおそらく原作に忠実に作られたであろう波瀾万丈なピノッキオの冒険物語が描かれている。
イタリアの名優ロベルト・ベリーニがジェペットじいさんを演じるのだが、愛情深い父親の役がピッタリであった。

その彼が丹精込めて作り上げた木彫りの人形が、なぜだか命を灯し、動き出すシーンはゾッとするほどにリアルで、これがCGを使わずに特殊メイクなどの視覚効果だけで表現されたと後々知って驚いた。

このリアルさに関して子どもが観たらちょっと怖いと思ってしまうようなこの忖度なしのビジュアルから察してもこの映画はどちらかといえば大人向け。
宣伝では「美しくも残酷なダークファンタジー」と書かれているように、単に楽しいだけではないところどころには、社会風刺のような表現もありながら、ピノッキオの冒険、というか成長物語が描かれていた。

ピノッキオは、誘拐されたり、時には騙されてお金を取られたり、容赦ない体験をたくさんする。
でも、おじいさんの言いつけを無視してそれは学校での勉強をさぼろうとしたり、美味しい話に乗せられたりするピノッキオのせいでもあるのだが、それに反省したり気がつくこともないままに危ない状態に陥ってしまう。
間一髪のところでターコイズ色の髪の妖精に何度も助けられ、そこで嘘をついてはいけない事、学ぶことの楽しさなどを知っていくわけだが、そこで正しさを保つことができないのがピノッキオ。
大好きなジェペットじいさんに会うことができないまま、月日は流れていく。
果たして、ピノッキオは正しさを取り戻して人間の少年になれるのか、そしてジェペットじいさんと再会できるのか・・・

作品の魅力は、なんと言っても最初にも書いたように、CGに頼らず、特殊メイク、小道具や特撮で映像表現することにこだわった、才能豊かなクリエイティビディ。
ピノッキオの物語自体、「何でもない物」に命を吹き込むとというもの。
その物語と沿うように、見事なまでに作り手たちも多くのものに命を吹き込み創造していった。
ピノッキオの特殊メイクはもちろんのこと、おしゃべりなコオロギや、カタツムリおばさん、そして人面マグロなど、独創的な芸術作品を堪能できるのはこの作品だからこそ。
ほんとうにこの寓話の中に迷い込んだような気持ちにさせられて、素晴らしい映像体験ができた。
きっとディズニーの実写版ができてもこんな風には仕上がらないはず・・・だからこそおすすめの作品です。
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