EmiDebu

星の子のEmiDebuのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
4.0
新興宗教を描く作品の多くはそのカルト性が持つ気味悪さを描くことが多い。
この映画に関して感じたのは、カルトをフラットな目線で扱うという姿勢だ。
登場人物の中には、信仰心が強いものもいれば、否定的な意見も唱える者もいる。どちらが正しいと判断されることもなく、淡々と出来事だけを描いていく。

主人公はその中で迷う。

登場人物や、やりとりが妙にリアルだった。

幸福を決めるのは当事者で、周りが「可哀想だ」と決めつけるほど主人公のちひろは自分のことを可哀想だとは思っていない。
家族が貧乏になろうと、変な宗教にハマってお姉ちゃんが家出をしようとほとんどの場合ケロッとしている。

親が変な宗教にハマってるから子供が不幸と決めつけるのはナンセンスなんだと思う。
ただ、娘が家を出て、生まれてくる孫にも会えないで得たものが風邪をひかない身体ならばそれは俺の価値判断のもとでは馬鹿馬鹿しく思える。

しかも、風邪はひくのだ。
風邪をひいてないと信じることが宗教なのだと思う。
「空だって飛べる」と信じることによって、その人の中では空だって飛べる。
ちひろ、両親、その上の人、さらにその上の立場の人、それぞれが一つのことを信じて集まってそう思わせている。ただ、それが間違っていても不幸だとは誰がいえよう。
誰かに依存して身を滅ぼすことも、側から見たら馬鹿馬鹿しく、当事者にとっては誇らしいことなのだから。

ラストシーンの解釈は、個人的には希望的に捉えている。ちひろは結局、親に合わせ、その親が背中を押してくれているように思えた。
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