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South Terminal(英題)のakrutmのレビュー・感想・評価

South Terminal(英題)(2019年製作の映画)
3.6
政府軍と反政府武装勢力の両方から狙われる民間人医師の姿を通じて、内戦状態にある国の一般市民の苦悩を静かに描いた、ラバ・アメール・ザイメッシュ監督のドラマ映画。ラバ・アメール・ザイメッシュ監督の作品は日本でほとんど公開されていないようであるが、フランスではジュン・ヴィゴ賞を受賞するなど、ある程度知られている監督である。本作が6本目の長編映画であり、今までの作品では監督自らが主演していたが、本作で初めて俳優を起用したとのこと。

アルジェリア出身のザイメッシュ監督なので、90年代の内戦状態のアルジェリアが想定されていると思うが、映画の中では国名や時代背景は明かされないまま、武装集団による略奪や拉致を描く冒頭のシーンから、内戦状態であることが暗示される。そして、医師の周囲や本人に起こる出来事をアクションやサスペンスで味付けしながら描くことで、内戦状態にある人々の孤独感や内戦の愚かさがあぶり出だされていく。

一言で言うと、なかなか渋い映画である。戦闘そのものは一切描かないし、ナチス占領下のフランスを描いた映画によくあるようなレジスタンスを描くわけでもない。それでも内戦の現状を垣間見ることのできる、どこか印象に残る映画である。そして、主人公の医師役のラムジー・ベディアの重厚な演技が映画の雰囲気にマッチしている(というか彼の演技のおかげで渋い映画に仕上がっているとも言える)。元々はコンビで活躍していたコメディアンであるが、近年は俳優や脚本家として活躍しているとのこと。また、アルジェリアのオペラ歌手であるアメル・ブラヒム=ジェルールが、医師の恋人役として出演している。
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