たいてぃー

すばらしき世界のたいてぃーのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.8
西川監督作。デビュー作の「蛇いちご」以降、監督のオリジナル脚本だったのが、本作は原作もの。佐木隆三の原作は未読だが、実在の人物って題材がいいのかストーリー的には、惹かれるものがある。脚本は西川監督がこなしていて、ユニークさも入れ込んでる。この監督らしさはあるね。
これまでの作品は、奇妙な人物が出てきて、どうなるんだろうって、ワクワク感があったが、本作はほぼ無い。主人公、三上(役所広司)の心情の変わり様が描かれる。それと彼を手助けする、優しいけど保身優先の凡庸な人たちとの交流も主となる。
好きなシーンは、身元引受人の妻の敦子(梶芽衣子)が坂本九の名曲を歌うシーン。ギターで伴奏はスーパーの店長、松本(六角精児)。このお二人とも、音楽活動を積極的にしているけど、こんなセッションを仕込んでくれるのは、なんか嬉しいね。🤗
それと、ラスト近くで、津乃田(仲野大賀)が全力で走るシーンがいい。三上との絡みで色々あったことが思い出される。三上の暴力に何も言えない、「逃げる」ことを宣言させられたのに、これにも何も言えない、でも温泉で三上への想いを吐露する、など。二人の演技に魅了されたのを思い出す。
他では、女優たちも良かったので、あげておく。まずは、山田真歩。警官役で運転免許をめぐって、三上とやり合う。だけど、三上の現状を知ると、優しく接するとこもあって。上手いね。
次に個室お風呂の接待嬢リリーさん役の桜木莉奈。自らの境遇を語り、三上を優しく包み込む。癒し方がいいんだよね。癒されてる三上もいい表情。
そして、義兄弟の組長の妻マス子役のキムラ緑子。三上との会話で「元気の出るクスリ使う?」が印象に残る。覚悟を決め、三上を勇気づけるシーンは、昭和の任侠ものの熱気が感じれ、結構好み。
その他、三上のアパートの下の階に来ていたゴリライモや三上の勤め先の同僚のコスモス青年とか個性的キャラも印象的。やっぱり脚本がいいのかな。でも、西川監督にはオリジナル脚本で勝負してほしいな。次作では是非とも!