ここ数年で観た実写の邦画の中でも抜きん出た社会派の傑作でした！根は真っ直ぐなのに、ふとした瞬間にヤクザだった頃の振る舞いに戻ってしまう三上を演じる役所さんの演技がとにかく凄い！映画として見ると良い人なのは分かるけど、正直近くにこの人がいたら怖くて避けてしまうかも、という雰囲気がとてもリアルでした。元ヤクザの殺人犯ではあっても、劇中、三上が暴力を振るったり、暴力を振るおうとするのは、酷い目にあっている弱い者を助けようとする時だけと言うのが一貫しているのが良いです。また技能や資格取得の為なら生活保護に加えて更に支援金が付与される事がある(ただし条件は厳しい)、など福祉についての知識が深められる映画でもあると思いました。一見落着と思わせて終盤に、とても気分が悪くなるあの職場でのシーンを入れる容赦の無さも凄い！
ただそこからのラストシーンは、もし脚色なら、無理やり衝撃的な展開にしすぎでは、と思ってしまいました。逆にもし実際の出来事に忠実に描いたのなら、単純なハッピーエンドにせずよくそこまで描ききったな、と肯定的に思います。この作品が傑作なのは間違いありませんが、ラストが脚色なのか実話通りなのかで自分の中の評価が少し変わるので原案となった「身分帳」も読んでみたいな、と思いました。
「シャバの世界は我慢する事ばかり、面白い事は起こらない、でも空が広い」
