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すばらしき世界のtkykのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.5
悪くはなかったがこうじゃない感もあった。レールをはずれた人が再び社会に戻ることの難しさと、それでも支えてくれる人がいることの希望を見せようとしているのは分かるが、三上が自分の罪に向き合い、反省した上で社会復帰しようと困難に立ち向かっているようには見えなかった。
確かに癇癪を何とか抑えようとしているのは分かるが、それは自分の悪い部分に向き合ってるだけであって、犯した罪自体は反省している訳では無い感じがした。その上、かなりの短気な性格が垣間見えるせいで「そりゃ周囲から煙たがられるの仕方なくない?」と思い、三上に同情できなかった。
また、周囲の三上を手助けする面々も津乃田と井口は自分の立場や三上を近くで見守ってきた経緯からも手助ける理由も納得できるが、弁護士夫婦とスーパーの店長に関してはそこまでの動機があるようには見えず、三上自身も根本的に罪を償うという意思が感じられなかったので、すこし甘やかされているような雰囲気も感じた。
個人的にはこの物語は自分の力ではどうしようもない外力のせいで「レールをはずれた」とみなされている人が、それでも見捨てずにいてくれる人の手助けも借りて、立ち直る物語なのかと予想していたが、三上の罪に向き合う姿勢がいまいち伝わらなかったため、違和感を感じるのだと思う。
自分が犯した罪に紳士に向き合っているにもかかわらず、周囲の偏見のせいで立ち直れないでいるからこそ、生きづらく、また助けてくれる人もいるから素晴らしい世界と思えるのかもしれないが、この物語はその罪に真摯に向き合うことも無いため、生きづらい世の中と言われてもいまいちピンと来なかった。
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