イラク・カタール合作作品。
アフター6ジャンクションにて三宅隆太さんがオススメしていた劇場未公開作品。
ポスターデザインというか、パッケージデザイン(配信サイトにおけるサムネ)見ると、いかにもアクション映画っぽいけど、アクション映画ではない。
原題がたぶん『ハイファストリート』なんだと思うけど、そこをスナイパーストリートにして、さらには狙撃指令ってサブタイトルまでつけてるもんだから、完全に誤解を生む邦題。
おまけに、これって指令だったっけ?
2006年、米軍占領下にあるバグダッドの一画だけで、リアルタイムのように話を進行させてる。
セリフが少なく、こちらに与えられる情報が必要最小限な作り。こういう作りって「これってこういうことかな」ってある程度汲み取って整理しなきゃいけないので、わかりづらくはなる。
けど、小さいながらも情報は提示されるので、「この人、ここと心情的に対立してんのね」とか「この人とあの人、そういうつながりなのかー」とかは、しっかり観てれば必要なピースは揃っていく。
なんなら、より些細な情報まで受け取ろうとするぶん、話のスリリングさとの相乗効果は増す気はする。部屋にある写真とか新たな登場人物とかが出てくるたびにちょっとずつ情報を更新しながら堪能。
一応、〈アブグレイブ刑務所での米軍による捕虜虐待事件〉については知識持ってたほうがいいかも。ストーリー上、大事なポイントなので。
演出面でいいシーンがいくつか。
特に狙撃手まわりはすごくいい。
顔にハエがとまってても瞬きひとつしないことで狙撃手の意志の強さが伝わってきたり、タバコを握りつぶすときの力の入り方から憎しみが伝わったり、小さくも効果的な演出と演技。
狙撃手がなぜその中年男を撃ち、苦しませ続けるのか。そこが謎となってこちらの興味を持続させる。一応最後に向かってその理由は提示されるけど、人によって解釈の幅は出てくるかな。
冒頭と最後、少年で結んである。
中盤でも少年が出てきていて、狙撃手にとって〈もう戻れない過去〉の象徴ってことなのかなあと。
お母さんがほぼずっと毅然とした表情なので、心情がわかりづらくはある。
ただ、この宗派対立の状況にもアメリカにも抵抗感がある人物として置かれてるのは確か。
報復の名のもとにアメリカのでっち上げによって始まったイラク戦争。この事情に詳しいわけではないし、こういう作品を観た時ぐらいしか思いが至らない人間だけども、戦争そのものとその後の残虐性があらゆるものを壊し歪めてしまうものなのかと痛感。
そして、今起きているウクライナ情勢のことがちらっと頭をよぎる。
ここや他のレビューサイトなとで極端に低評価だけど、割と良作かと。少なくとも★1とか2のレベルの作品ではないと思う。