このレビューはネタバレを含みます
人の表情の切り取り方が本当に上手いと思った。その表情やシーンの切り取り方でストーリーを展開していくのがアート作品のように美しいと思った。
それぞれのシーンに少しずつ内容が込められていてそれをそのシーンの切り取り方も美しいと思った。
音無しでここまで表現できるのがすごすぎる。特に人の表情や後ろ姿だけで人の悲しみや葛藤を描いているところで何度も鳥肌立った。
ちょっと難しい所もあったけど、ナディア家と兄のサラームの間に運命の皮肉があったのか。アトロク三宅さんの話聞いてやっと分かった。
そうなってくるとスアドは狙撃手が自分の子供だと気づいてたっぽい。最初の狙撃手をマジマジ見る感じと、覆面の狙撃手を撃った感じ。
多分ビデオのレイプされた男のを取ったっていうのはアハメドでその怒りからサラームは撃ったのかな。恐らく深い傷を負っていたんだろうことが最後の場面で表現されていると思う。ラストはレイプされている自分を子供の自分と現在の自分が俯瞰してみているって感じだと思った。
多分サラーム自身はアハメドのこと父親だと知らずに撃ってしまった感じかな。
それでアボは米軍寄りのイラク人で他の人も戦争に疲れた一般市民だったと思う。
ただサラームは米軍に酷い仕打ちを受けたためにイラク人として米軍への強い恨みがある人なんだろう。
ひとつだけ、恐らくアハメドがレイプの現場を撮影していたことを告白するシーンの後、写真が2枚写される。その写真が大人になった恐らくサラームだったところの解釈が仕切れないな。
前半では子供の頃のサラームの写真だったからなんらかのメタファーになっているように思うんだけど。
ラストシーンで大人になったサラームと子供のサラームが一緒にレイプシーンを見ていたとこから解釈すると、子供になっても大人になっても心に負った傷は消えないというメタファーになっているのかな。
そう考えると、戦争の傷は人の心に残り続けるということの暗示にもなっているようにも思う。
本作はイラクとカタールの合作だと聞いた。恐らくイラク目線で作られているはずだから、米国へのアンチテーゼ的な意味のこもった作品だと思う。そう考えると多分これまでの解釈は間違ってないのかなという感じがしてくるなぁ。
まあとにかく人の表情の写し方とシーンの切り取り方の構図が美しいから内容理解できなくても飽きずに一週目見られたのでこの映画の力は凄いと思う。
恐らく米国とイラクの政治的な問題の面があるから、必要最小限にそれでいてドラマチックでアーティスティックでシェイクスピアのように悲劇的っぽく語られたのが本作なのではないかなと思わずにはいられない作品だった。
なんとも見応えのあって、感想書きながら徐々にこの作品の魅力に気付けてきた気がする。ここまで書いてどんどん味わい深くなってきて今心臓がドクドクいってる。良い映画体験出来たときのやつだ。じっくり向き合えて良かった。
誰かこの映画の解釈についてもう少し話してる人おらんのかなぁ。