一人旅

ファースト・カウの一人旅のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
ケリー・ライカート監督作。

ジョナサン・レイモンドによる2004年発表の小説を、米インディペンデント映画界の重要人物:ケリー・ライカートが原作者のレイモンドと共同で脚色し、ライカートが映像化した異色ドラマで、牛のミルクを利用して一攫千金を狙う男二人の行く末を描きます。

19世紀前半、西部開拓時代の米北西部オレゴン州を舞台に、ひょんなことから意気投合した料理人のクッキーと中国移民のキング・ルーが、資産家の仲買商が所有する地域に一頭しかいない貴重な牛のミルクを夜な夜な盗み、それを材料にオリジナルのドーナツを作って市場で販売することで一攫千金を試みていく姿を描いた、西部開拓時代における一種のアメリカンドリームを題材にした男の友情ドラマとなっています。

ライカートらしく過剰な演出を排し、始終淡々とした空気感覚で物語が静かに進行していく異色のドラマで、金(ゴールド)でも毛皮でもなく、“ドーナツ”で資産を築こうという男たちの小市民的な発想が西部開拓映画の王道から外れた新たな視点として興味深いですし、人種の異なる二人の男の多くを語らない物静かな信頼と友情の形成でも感じ入らせてくれます。

牛の所有者に盗みがばれたら即終了という危うい商売に己の人生を賭ける男たちの挑戦と友情の顛末を、オレゴンの鬱蒼とした森林風景の中に映し出した異色ドラマで、主演のジョン・マガロ&オリオン・リーのほぼ無名同士が乳搾りとドーナツに活路を見出す男二人を淡々と好演していますし、夜中にこっそり乳を搾られる牛さんの円らな瞳も印象的な作品となっています。
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