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MONOS 猿と呼ばれし者たちのワンコのレビュー・感想・評価

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)
4.2
【示唆するもの】

重油を塗りたくったような表情は、「地獄の黙示録」を彷彿とさせる。

「蠅の王」や「闇の奥」を思い出すというという人もいて、確かに、「地獄の黙示録」は「闇の奥」にインスパイアされた作品だったことを思い出した。


(以下ネタバレ)

作品の登場人物たち、8人の少年少女の兵士と人質のアメリカ人女性ドクターは、二つの場所を移動するが、スペイン語と、高地とジャングルから考えると、南米アンデス山脈とアマゾンのジャングルを抱える国なのだと想像できる。

人質を監視しながら規律を求められるなか、少年少女の兵士には自由恋愛などなく、セックスにもメッセンジャーと呼ばれる上官の許可が必要と思われる場面がある。

下の兵士の誤射で死んでしまった乳牛と、責任の重さに苛まれて自殺するリーダー。

セックスどころか上官の前での発言にも許可が必要な規律とは、こういうものなのだろうか。

責任感に乏しい下の兵士。規律も実は一時的に順守しているだけという意識なのだ。

リーダー不在のなかでもともとあった規律は乱れていき、新たなリーダーは独自の解釈で、別の規律を構築していく。

告げ口は許さない。

脱走もご法度。

人質の脱走で、一気に乱れ始める規律は、なりたてのリーダーのやり方への不満にもつながり、告げ口や脱走も誘発し、悲劇への道を辿るのだ。

この作品では、少年少女の兵士を主要な登場人物としているが、十分な教育を受けず、兵士としての訓練や規律重視の生活だけを経ているのであれば、大人になっても、この子供たちのように短絡的で、普遍的な価値など見出すことなく、場当たり的な行動をとるだけなのではないのかと考えさせられる。

実は、一時的に大規模な集団を構成しても、ちょっとしたことをきっかけに分裂・対立するゲリラやテロ組織、そのものを見せているのではないのか。

少年少女兵が実際の問題であることは間違いないが、少年少女兵は象徴的に使われたメタファーのようなものではないかと思ったりした。

国際社会は、こうした人ともやり取りしなくてはならないのだ。

結構、見入ってしまう作品だった。
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