シカク

グリーン・ナイトのシカクのレビュー・感想・評価

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)
4.3
ディヴィッド・ロウリー監督のダークファンタジー。 

監督が学生時代に出会った、作者不明の「ガウェイン卿と緑の騎士」が元の、ダークファンタジー。
主人公は、王家の一族という身分でありながら、騎士になれなず、色事に耽り、穿つの上がらない青年ガウェイン。
おどろおどろしく奇妙な旅路そして、その終着地で迎えるありさまの始終を、さすがの映像美と感性で大胆且つ繊細に描かれている。
アーサー王や円卓の騎士は何となく、聞いたことはあるけれど、依然、予備知識皆無のままの鑑賞。ある程度これらの知識や情報を、下地に敷いた方がとっつきやすくはあると思うが、自分は全く知らない方が却って、予測できない分、暗いストーリーテーリングや世界観、後ろめたいシーンなどにアジャスト出来ました。 

娼館で恋人エセルに、「キリストの日よ」とバケツの水をぶっかけられる、手荒すぎる目覚ましで物語が起き上がる。円卓の正面にアーサー王が座して、取り囲むように騎士たちも席に着く会合の場、その場に居合わせるガウェインの元に、別カットで何故かガウェインの母親らしき人物が目隠し、それらしい書物やら薬草みたいなのを駆使して、術めいた事をして、ガウェインの眼前に突如現れる緑の騎士、この時が物語全体を取り囲むややこしさの元凶。その後、真に勇敢な証を得る為、一年後に果たす、勝手な約束を取り付けらる。そもそも首を刎ねられに遠路はるばる赴くというのも狂った話。一度は英雄として持て囃される訳だが、ガウェインは一年後の緑の騎士との約束を果たしに行く、物語の核となる動機とその行いの先にあるものを、道中の数々の寓話的シーン経て透けて見させるのが狙いの映画。

実際、ガウェインは12の騎士の中でも、勇敢で優れた騎士みたいですが、怠惰で頼りない若者の面を強調してるのは、現代にも通じるアプローチだと感じた。監督はあまり自身の作品で、暴力的表現を好まないみたいですが、ここまで堂に入ったいかにもA24な尖りを出せるとは。作品は追って来てるけど、この監督かなり好き。
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