kuzira

世紀の終わりのkuziraのレビュー・感想・評価

世紀の終わり(2019年製作の映画)
3.7
冷静さの中に性と動、生と道を感じる作品

ちょっとばかし知りたいことがあって
LGBTQ(こうして何か特別なようにカテゴライズするのが好きじゃないけど)
取り扱う作品を最近よく観てて

特にこの作品は男性同士の恋愛に対して
一つも悩んだり周りからの目を気にしていなくて
そんな当たり前の世界の物語を期待してた


世界的な認識とかの違いなのかな
日本ではまだ全然そこを描かないと

同性愛?ってなって物語が始まらないから
説明したり意図せずテーマになってしまう


固定概念からの脱却というか、
本当世間一般とかいちいち別にいいじゃんね

その世界の特有な大胆さとか野生的欲望、
普遍的で当たり前のような性活動とかに
多少驚くこともあるけど極々自然だった

ここを包み隠さず描くことで
より自然に物語において生活を感じたし

複雑なストーリー展開だからこそ
簡単に端折って欲しくなかったから良かった


とにかく画作りの巧みさに惚れ惚れする

街並みと人物の動かし方から、配置
それから左右対称のシンメトリー構図で
登場人物にフォーカスを当てながらも

うっとりするような浅めの色彩カラコレで
絵に映っている全てが
今の現実なのか、過去の景色なのかを
どんどん複雑に曖昧にさせていく

どこにも居場所がなく飽きがこない
不思議な、この映画らしい画作りだった


物語が伝えていた通り、
目的地や旅先に到着してしまったら
きっとこの人生の旅は終わりを告げるのだろう

だからこそ浮遊し続けるような
記憶と時間軸、時間の旅が繰り返され

きっと思い出せないんじゃなくて
自ら思い出を捨てていたのだとオチョを思う

記憶の旅、時空の旅の最中や途中は
色んな人生を生き続けていられるような
好奇心と幸福があって

どの選択肢を選んでいたとしても
ifの旅はそっと終わりを告げるのだろう


世紀の終わり、バルコニーから手を振る横顔

君じゃない誰かを忘れてしまっている



とても不思議な映画の時間を感じた
kuzira

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