来夢

異端の鳥の来夢のレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.2
ロードムービーって行く先々で良い人々と出会って主人公が成長していくっていうのが定番だけれど、これは行く先々でヤバイ人々と出会って……という話。ホラー作家平山夢明のどうしようもない話(馬鹿げた話)を突き詰めたという「俺が公園でペリカンにした話」とかなり似た雰囲気があるけれど、ホロコースト、差別、主人公が子供という設定のおかげで、おバカな話と同じ様相なのに、重たくて目を背けたくなる話になってしまうという不思議。いや、これもなかなかおバカな話ではある。ただ、それがリアルにあったら相当嫌だよなってことで、サスペンスでもホラーでもそれがリアルじゃないから楽しめているわけで、現実に起こっていた話であれば見方も感じかたも変わるよね。それを突きつめた作品の代表作にハネケの「ファニーゲーム」があって、それはエンタメを排除することでリアリティを感じさせ、究極の胸糞悪さを催す映画になったわけだけれど、本作はそれに比べるとかなりエンタメを感じる。エンタメを感じるぶん、凄く見易く面白いし、話を受け入れやすい。反面、(現代人にとって)現実離れしすぎていて、前情報なしで観てしまうと、この世界と地続きに起こった悲劇だと感じ辛いところもあるなという問題も。劇中でも説明はほぼ無いしね。ある程度のホロコーストの知識を持ったうえで、これは現実にあったことだ(真偽は気にしない)と身構えて観るといいのかな。でもやっぱりこれ、糞お馬鹿映画に感じちゃうなぁ。それがリアルということは、一定の条件下で人間は現実離れした糞みたいなお馬鹿な行為をやれてしまうっていうことに他ならないんだな。おそろしや。
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