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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのtkykのレビュー・感想・評価

3.9
シュリがネイモアとタロカンを巡る場面やタロカンとワカンダの戦闘場面はとても良かったが、内容はかなり首を捻らざるを得ない作品だった。

前作の最後にティチャラがワカンダも世界の一員として貢献する事を宣言しているが、本作は冒頭からヴィブラニウムの扱いを巡ってワカンダと諸国が対立しているので前作の宣言が蔑ろにされているようだった。仮にヴィブラニウム以外の点で貢献しているとしても具体的にそういった場面はないので未だにワカンダが一匹狼のようで前作から後退していた。
本作はなんといってもチャドウィック・ボーズマンが亡くなったことが非常に大きく影響しているので、彼の死をどう受け止めるか、彼の功績をどう受け継ぐかが物語の重要なテーマである。しかし結果としてその点はかなり曖昧なままだった気がする。彼の存在はあまりにも大きいのでその後を継ぐというのはかなりハードルが高いとは思うが、それに対する決着の付け方に全く根拠がないので逃げに見えたし、前作で描いていたことを蔑ろにしていた。どんな結果であれ、根拠があればそれなりに納得できると思うが、ティチャラの跡を継ぐ事やワカンダの伝統に対する心情がイマイチハッキリしないので「大人の事情」が絡んでいるように感じた。
ワカンダとタロカンが衝突する理由に関しては動機が矮小化されているように思った。本来ならば資源や伝統の保守に対する考えの相違が対立の原因になりそうだが、結果的に復讐が全面対決の原因になっているのでワカンダとタロカンの対立である必然性がなかった。細かい事かもしれないが元はと言えばワカンダがヴィブラニウムを共有しようとしなかったことが原因なので最終的にはヴィブラニウムの扱いに対してそれなりの結論を出すのが筋だと思うがそれは無かったので、ますます物語の意義が薄く感じた。
何よりもエンドクレジット後の映像はかなり蛇足だった。前作から散々ワカンダの伝統に関して登場人物たちが悩んでおきながら、自分たちだけは良い思いをしようとしているとしか捉えられないものだった。穿った見方だと思うが王室制度がないアメリカだったら気にもとめないだろうが皇室がある日本や王室がある国々だったら非常にモヤモヤすると思う。

結果として前作で描いていたことを全て帳消しにしかねない作品だった。
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