ベルサイユ製麺

ザ・バスタードのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ザ・バスタード(2013年製作の映画)
3.7
ジャケの雰囲気が好みで借りただけなのですが、って…Filmarksはジャケ写無しですな…。カタール映画(純粋の…かは不明ですが)は初めて観ましたね。フットボール好きならば馴染みが有る国なのかな…?圧倒的にイスラムが強い国です。(←不安になって調べたので間違いないです!)

◆①
食堂で働く中年の男サラーは、裏のゴミ捨て場で赤子を拾い、その子をモフセンと名付け育てることにした。
成人したモフセンは、僻地の街で育ての父サラーと暮らしている。周囲からは“捨て子”とからかわれ、やっと見つけた靴工場の警備の仕事も、憧れの同僚女性モルジャーナの窃盗(トラックでゴソっと!)を庇った為にクビ…。「僕なら大丈夫だから…」と嘯きつつ、一人有機溶剤を吸いながら心を鎮める毎日です。


カタールの暮らしぶりは、まあイメージ通りの中東の感じです。都市部の都市ぶりと、僻地の僻地っぷりのコントラストは、まあ日本でもそうですね。

◆②
モフセンの二人の幼馴染み。
🧔一人は巨漢のラルノーバ。亡き父が街を仕切っていた悪党で、怪物のような母親の言いなりになり二代目“街の悪党”をやっているが、心が弱い。頭もちょっと…。
👩‍🦰体を売ってなんとか生活をするベント。ちょっとボンヤリしたところがある。かつてテレビでも報道されて大きな話題になった“虫に愛される少女”。今でも彼女の脚をつたって蟻が昇り降りし、部屋には沢山の昆虫が…。
ラルノーバはベントに気が有り、ベントはモフセンの事をずっと気にかけているが、モフセンは靴泥棒のモルジャーナが今でも好き。


基本的にはモフセン・ラルノーバ・ベントの三人と、モフセンとつるむ唯一の知り合いカリーファ、そしてラルノーバのモンスターマザーの五人で展開するお話です。

◆③
カリーファの強引な誘いでモフセンは自宅の屋上に携帯のアンテナを立てることになった。今までこの街には携帯の電波が届いていなかったから。初期投資は必要だったが、毎月働かなくて済む程度の固定収入が。更にカリーファは携帯そのものを販売によって大きな利益をあげる!携帯の有る生活を齎らしたモフセンは皆に感謝され、名声と富を手にした。もう誰も“捨て子”などとは呼ばれない。
そして当然、街を取り仕切るラルノーバは当然黙っていられない…。


…と、なりまして、暴力で街を支配するラルノーバはモフセンに嫌がらせなどする様に(母にしむけられて)なるのですね。かつては仲良しだったのに…。争って欲しくないと願うベントの額では今日も蟻がウロチョロしております。

先ず驚かされるのは、撮影のハイレベルさですよ!画の絵画的な美しさ(丘から見下ろす長閑な野山に巨大な発電プロペラの立ち並ぶ様よ!)も、視点のスムーズな?移動も、相当にレベルが高く思えます。カタール映画恐るべし!…なのか、単に共同制作のフランスのスタッフなのかもしれませんが。

ジェラシーと、モンスターマザー(マジでモンスター!この人見る為だけでも必見)に追い立てられてで怪物化していくラルノーバ vs コンプレックスを解消できたことから金と力(権力)に魅入られて自らを神格化しようとするモフセンの構図になり街は大きな変化の時を迎えます。
徐々に変わっていくモフセンを心配しつつもラルノーバの暴走も止めたいベントと、ただたかる蟻達…。

観始めるとまあ、思いがけない流麗な作りに、新鮮さも相まって夢中にさせられました。
構図的には、《旧来の勢力≒国家・宗教》《自然・調和≒神》《新しい神様≒情報・経済》の兼ね合い、対立の話とかなのかなぁ?なんて思いながら観てたんですけどね。うーん、結局良くはわからなかったですだよ…。
例えば中盤から“靴泥棒”のモルジャーナが、なんと靴屋をオープンさせて大成功を収めるエピソードとか有りまして、洗練されたビジュアルイメージの打ち出しなどから連想させるのは“欧米のコマーシャリズム”とか“グローバリゼーション”の象徴のようなのですが、だとするとモフセンの立ち位置がブレちゃうし…。アンテナを建ててから体調をみるみる崩すモフセンを見てると製作者が情報社会に懐疑的なようにも思えるけど、果たして?って感じです。…これは正直、カタールという国の事、文化、宗教、政治などをちゃんと理解してないと府に落ち無い作品のように思えますね。無念…。(しょっちゅう書いてますが)理解できないのがホントに悔しかったです。そのくらい“面白そうな物語”に思えたっていう事です。
終わり方が凄く舞台っぽかったので、ひょっとすると元は戯曲とかなのかも知れませんね。

…そして朗報!ネコがいっぱい出ます!
パッと見でも、野良三匹、モフセンの家猫一匹は確認。ネコネコメーターは4🐈+です。カタールはどうやらネコに優しく国=善い国のようです!因みに悪党ラルノーバはピットブルをヒトにけしかけてましたね!犬=悪の使い。…映画における犬の扱い酷過ぎないかな?