ベルサイユ製麺

サスペリアのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.2
『サスペリア』のリメイク!


…オリジナルは観てるつもりなんだけど、なんせ大昔だったので『サスペリア』観たんだか『ゾンゲリア』を観たんだか『ファンゴリア』を読んだのか『サンガリア』で乾きを潤したんだか『テイトウワ』聴いて渋谷系を気取ったんだか記憶が曖昧…。


アメリカ娘が念願のドイツのバレエカンパニーに入団したらバッキバキにヤバいカルトだった


…まあなんせね、難解難解と何回も聞いておりましたからな、最大限に身構えておったのですが、いやぁー何のことはない、もうサッパリ分かんねぇじゃねぇか!!!
1977年のベルリン(とかまたシンボリックな時と場所)が舞台。
…先ずカウンセラーの元を訪れるみすぼらしい身なりの少女パトリシア。極度の心神耗弱状態のまま、被害妄想めいたストーリーを語り始めるも、当然のように“ヤバ味が深刻”と捉えられます。
場面変わって…
コレオグラファーのマダム・ブランに憧れたオハイオ産まれのアメリカ娘スージーがブランの在籍するバレエカンパニーを訪れ、天賦の際でもって経験・推薦全く無しで鳴り物入りの入団!そのまま突然失踪したダンサーのパトリシアと、更にその代役のかわりにいきなりメイン役に抜擢されます!スージー、恐ろしい子…。
しかししかし、このカンパニーは何かがおかしい…、と。またあらすじ書いちゃったじゃねえか!なんかい書くの!
鑑賞前に知人から「怖いっていうか痛い」と聞いていたので、きっと先生のことをお母さんって呼んじゃったりするのかと思ったんですが、肉体的な痛さの方でしたね。アイタタタタ…。フックでグイ!とか、カイホウコッセツでボキリとか、これは痛みが伝わりますね。♯痛みでつながりたい

それにしてもですね、…清々しいほど分からない。なんかもう笑けてきます。ストーリー自体は別段複雑でも無くて、見失う事も無いですし、誰が誰だか…みたいな事も無いです。時系列もおとなしいもんだし。しかしですねぇ…、これいくらなんでも物語に重ね合わせている情報・メッセージが多すぎませんかい?身体を捻じ曲げ、ある時は執拗に飛翔にこだわる舞踏から、漠然と歴史の中で虐げられてきた女性たちの企むテロのお話なのだろうとは感じるのですが、そこにRAFの話が重ねられる意図は正直良く分からりません。儀式のディテールや、その背景の神秘主義についてもサッパリ。ブランとマルコスへの投票はなんの隠喩なのか?細かいカットアップやエフェクトの示唆するところも見事なまでに理解不能…。これは独りよがり、…と言うのが拙ければ、シネフィルによるシネフィルの為の超優等生的映画と言わざるを得ませんよ。全く鼻持ちならんなぁ。

…それでですね、それなのにこの映画ホントに厄介なのは、全然分かって無いのに体感としてメチャクチャに面白い、心地良いって事なんですよ。単純にエンターテインメント的に面白い!なんとなく荒木飛呂彦的なビザーレ感有りますよね。オルガのやられっぷりなんてまるでスタンドの仕業だし。ラストのあのお方もスタンドみたいだし。
とにかくあらゆるカット、場面の転換、演技のニュアンス、劇伴、等々々…が、まるで印象的なあのかぎ針の様にハートの柔いトコを引っ掛けては引き摺り回していきます。なんと嗜虐的な機能美なんですかね、これは。

グァダニーノ監督、前作と同様に理解出来るはずもないような事柄を扱いつつ、いつのまにか心のヒダヒダを巻き込んでこっちを普通じゃない状態に置き去ってしまう魔術的なやり口には本当に恐れ入ります!

…ただね、一点だけちょっと看過し難いことがありましてね。お一方、本物の魔女を使われてますよね⁉︎それはズルいよ。あんな還暦間近の美女なんて人間の訳無いもん!!…「なんだただの本物か…」ですよ!!