健一

罪の声の健一のレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.9
WOWOWで放送していたので録画して鑑賞。

昨年秋。劇場に観に行くかどうか 悩みに悩んで....行かなかった本作。
今回自宅にて鑑賞したが この作品は 家でじっくりと鑑賞 したほうが良かったような気がします。

素晴らしい作品でした。
142分。この長尺を全く感じさせず イッキに見入ってしまいました。
もうなんか 日本映画の底力を感じた。
人気俳優を起用した単なる『アイドル映画』ではない。 観るものを揺さぶる超一級のサスペンス作品。

昭和最大の未解決事件の真相を追う中で 犯行グループは何故 脅迫テープに幼い男の子の声で吹き込んだのか 追求していた。
一方 仕立て屋を営む男は 父の遺品の中からカセットテープを見つける。
そこには小さい頃の自分の声が録音されていた。
その声は かつて人々を恐怖のどん底に陥れた未解決事件で使用された脅迫テープと同じものだった・・・

1984年頃に実際に起きた『グリコ森永事件』をモチーフにした本作。
あの頃の記憶が37年ぶりに蘇った。
当時 そんなにお菓子を食べるような年齢ではなかったが 近所のスーパーのお菓子売場の棚がガラガラになっていたのは覚えている。
『かい人21面相』『きつね目の男』『毒入りお菓子』など 連日ニュースで報道され日本中が『脅迫される恐怖』に震撼していたと思う。
あの頃感じていた『見えない恐怖』を本作は見事に表現している。
はじめは『こんな昔の事件 今頃掘り返して何になるの?』と思いながら見ていたが、星野源 宇野祥平 演じる『当時の子ども』を演じた二人の迫真の演技により『あの頃から止まっている人達もいる』という事に気付かせてくれる。
この演出&役者達の演技が本当に素晴らしい。
そしてラストに向かえるあの結末。
最後は涙を流しながら 立ち上がってTVにかじりついていた。
私の中で 邦画サスペンスNo. 1 作品は黒澤明監督の「天国と地獄」だが 本作はこの名作に匹敵する 新たな名作 と言っても過言ではない。
日本アカデミー賞では 脚本賞のみの受賞結果に終わってしまったのが信じられない!

以前の私のように『観るかどうか迷っている』かた。
これは 観なくては!
傑作です!
健一

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