TAK44マグナム

シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッションのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

4.5
フランスでもXYZ!


舞台はフランス。
スタッフもフランス。
キャストもフランス。
だけれども、紛れもなくこれは「シティーハンター」!

かつて、ジャッキー・チェンが後藤久美子と組んで実写映画化して大変な惨事となりましたが、よもやフランスで実写化されたものがここまで「シティーハンターしている」とは、どんな奇跡なのか。
もちろん、日本では吹き替え版のみの上映で、主題歌は「GetWild」だし、その他細かいところも日本仕様にチューンされているからというのも大きいでしょう。
「GetWild」が流れるタイミングなんてアニメ版そのまんまだし、劇中曲までちゃんアクションシーンで流れますしね。
そして何といってもキャラクター名が日本名というのが何よりも大きい要因(フランスでは冴羽獠はニッキー・ラルソン)。
フィリップ・ラショーがコスプレしているだけなのに、そこにいるのは完璧なまでに冴羽獠!
普通、これで冴羽獠って言われても違和感しかないはず。
同じ東洋人のジャッキーでさえ、ジャッキーにしか見えませんでしたから(それ以前にコスプレもモノマネもしていなかったけれど。コスプレしたのは春麗(苦笑))、これはもうフィリップ・ラショーの深い原作愛がなせる技なのではないでしょうか。
さすが、その熱意におされて北条司先生が許諾しただけの事はある、いやそれ以上でありましょう。
すげえな、フィリップ・ラショー!
残念ながら他の作品を未見なのですが、評価をみる限りどれもかなり支持されているコメディ映画みたいですね。

・・・ん?コメディ映画?

そう、フィリップ・ラショーはコメディ畑の方なんですな。
なので本作も体感的に8割ぐらいはコテコテのコントで出来ています。
元々、原作からしてギャグや緩い要素が満載な漫画・アニメではありますが、ここまでベタではないし、コミカルではないです。
そうなると「これのどこがシティーハンターなんだよ」という空気感が劇場を満たしてもおかしくないわけですけれど、これがまたそんな事は全くありませんでした。
いや、そう憤慨する生粋のファンの方もいるでしょう。でも、基本的にすごくベタな笑いなのにメチャクチャ面白いんですよね。
それが不思議とシティーハンターの世界観にもマッチしていて、鑑賞中ずっと楽しくて仕方がなかった。
獠や香だけでなく、オリジナルのキャラクターもたくさん出てくるんですけれど、みんなけったいなコメディリリーフで、どいつもこいつも魅力的。
チョイ役の精神科医のオッサンまでもが最高にアホくさくて良かった。
なんなら、本来のレギュラーキャラである海坊主や冴子よりも目立っていて、獠たちを盛り立ててくれます。

そして、これが重要だと思うのですが、キメるところはちゃんとキメてくれるんですよね。
「ジョン・ウィック」のガンフーみたいな銃撃格闘アクションがあったかと思えば、唐突に主観映像でギャグまじりのアクションが始まったり、原作のシリアスな名場面をいくつか再現したり、おバカやエロをやりながらも冴羽獠の格好良さもバッチリと描写されていて、それが原作がもつテイストをうまく引き出しているんだなと思いました。

獠と香の微妙な関係を浮き彫りにするシナリオも、最後のオチもシティーハンターぽくて好きですね。
そして、「GetWild」が流れてきてエンディングに突入すると、それまでゲラゲラ笑っていたのに何故か目頭が熱くなりましたよ。
これでこの獠たちに会えなくなるのかと思ったら寂しさがこみ上げてきて。


そうそう、本作は実写作品ということで神谷明ではなく山寺宏一が冴羽獠役なのですが、基本的には格好いい役の時の山ちゃんでした。
でも、「もっこり〜!」のセリフだけは神谷明のモノマネでしたね(笑)
これがまた、似ていました!

2019年は本家本元の劇場用アニメも公開され、そちらも懐かしさも手伝って良作ではありましたが、ただでさえ難しい実写化でこれだけ完成度が高いものを観せられると、何だか日本人としてジェラシーを感じてしまいますね。
いや、本当に面白かったので、是非とも続編をお願いしたい!
またパリジャンの冴羽獠に会いたいぜ!


劇場(横浜ブルク13)にて