原田太喜

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいの原田太喜のレビュー・感想・評価

4.6
『システムクラッシャー』鑑賞しました!心揺さぶられる映画。ものすごい衝撃を受けた気分。スカッとしないし救いもない。でもこの作品のような出来事は日常に溢れている。

 主人公のベニーは9歳の女の子。感情コントロールが困難(おそらく虐待と養育環境によるもの)で、けたたましい音楽とともに走り、暴れ、叫び、非行やトラブルを重ねていく。そんなベニーを抱えられる福祉施設はなく、あちこちたらい回し。まさに『システムクラッシャー』そのもの。ベニーには顔を触られるとトラウマが発動し、完全にコントロールを失う特性があるため見ている側は常にヒヤヒヤ。
 通学付添人のミヒャがベニーに寄り添っているし、児童福祉司もあれこれと手を尽くそうとするが状況は好転しない。今作は福祉がしっかりと機能していた状況でさえベニーを抱えきれない姿に見ている側も途方に暮れてしまう。安直に心から寄り添う存在がいれば万事オッケーといった着地にはならない。
 あとあの母親は養育能力も無ければ、責任を果たす気もない。それがさらにベニーを傷つけている。かなりイライラさせられた!

 ベニー役の子役は本当にそういう子供にしか見えないほどの存在感。『こちらあみ子』の子役と匹敵するほど。インパクトあるシーンも体当たりで演じており、撮影の舞台裏が気になる。

 見ていてとてもしんどく、でも目を離すことのできない重い映画体験。時々ベニーのことが頭をよぎるようになるんだろうな。
原田太喜

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