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童年往事 時の流れのTakaCineのレビュー・感想・評価

童年往事 時の流れ(1985年製作の映画)
4.5
【家族の変容】
長年観たかった映画。
侯孝賢監督の半自伝的な作品です。
冒頭から昔の日本家屋(障子畳文化)が出て来て、田舎に帰った気分になりました。格好も自分が小学生だった頃のような格好だから、余計に懐かしかったです😌

《まるで自分の原風景》
本作を観ていると、自分の子供時代の原風景を観ているようで、いろいろ思い出しちゃいました!

僕は子供の頃に、一緒には住んでなかったけど、おばあちゃんの家に行くことがあったから、おばあちゃん子だったんです👵

だから本作のおばあちゃんに格別親しみがあって(いつもニコニコ優しい)、それだけで温かい気持ちになりましたね😊

主人公の男の子、阿孝(アハ)が小学生から高校生くらいまでに体験する物語は、子供時代の自分にも当てはまる事柄ばかりなんですよ!

元気で怒ると怖い母、仕事人間で寡黙な父(本作は療養で自宅にいましたけど)、しっかり者で大人な姉…は自分の家族と同じで親近感が湧きました。

《変わる家族の有り様》
本作で描かれるのは、やや貧乏でも賑やかに暮らす小学校高学年ほどのアハの姿~家族を失って途方にくれて寂しく佇む高校生のアハの姿といった、アハを通して描かれる「家族の有り様の変容」なのです。

前半の賑やかに集うアハ家族の描写は、『冬冬の夏休み』(1984)にもある、日常のありふれた市井の生活の穏やかさにホッとして、また生き生きと楽しそうで見入ってしまいます🤩‼️

なんとも懐かしくて愛しくて可笑しくて、ずっと観ていたかったです(みんなでご飯を食べる場面が特に好き)‼️

家族の中心に母親がいて、自然におばあちゃんを敬っているところがいい‼️

子供達の演技演技しない素朴な表情が、これまた良かったです‼️

後半の家族に異変が起きて崩壊する描写は、『悲情城市』(1989)や『牯嶺街少年殺人事件』(1991)のように、歯車が狂い始めて、不穏な雰囲気から決定的な悲劇へ突入してしまう描写に唖然😱💦

もっとのどかな作品と思ってたのに…😱ヒェー💦

「大陸(中国、広東省)に戻りたい!」と切実に願っていたおばあちゃん、実はアハの両親もそう願っていました。

アハの家族は、国共内戦で中国から台湾に移住した"外省人"。詳しい歴史はよく分からないのですが、いつかは故郷の土を踏みたいと切に思い続けていたのですね😢

僕の母親は樺太(サハリン)生まれだったので、生前、やっぱり樺太に帰りたいと言い続けてました😭

前半の「僕(アハ)の少年時代」といった懐かしい青春ドラマが、後半の「時代に翻弄された家族の崩壊」といった社会派ドラマに変化するところに、(素直に描写できない当時に挑戦した)侯孝賢の本音やテーマ性が潜んでいると感じました😭

本作を観ていて、僕の思い出とリンクするように…あんなに元気だった両親が弱くなって、姉が嫁いで家を出てしまい、おばあちゃんがいつの間にか死んでしまう(僕が子供の頃なので、詳しくは覚えてなくて…)😢

家族がだんだん弱くなる様が淡々と描かれているけど、非常に暗澹たる気持ちになってしまいました😭

アハの回想は、楽しく賑やかだった子供時代、どこかに向かおうとして言葉(客家語)が台湾の店員に通じないおばあちゃんとその特技、『恋恋風塵』(1986)の辛樹芬(シン・シューフェン)が演じる女の子への淡い恋心、突然の身内の死の衝撃(重み)…など感情の起伏が激しい。そこには自責の念が強く含まれています。

きっと監督にはそんな想いがあったのでしょう😢(アハは監督自身だから)

緑生い茂る風土と自然光をとらえた映像の美しさ(撮影:李屏賓 リー・ピンビン)やノスタルジックで心地良い曲(音楽:呉楚楚 ウー・チューチュー)に癒されながら、台湾の暗い歴史を教えてくれます。

人生の愛しさと儚さ、生きることと死ぬこと(原題:The Time to Live and the Time to Die)、家族の思い出など、誰もが抱いている普遍的な原風景(集合的記憶)を、繊細に紡ぎあげた美しい一編です。

これは一度は観るべき名作です。

《備考欄》
間違って別の劇場に行ってしまい、スクリーンの内容が違っているとハッと気付いて、慌てて本来の上映劇場に急いで行きました💦5分くらいの場所で良かった😅💨(ふぅ~朝から汗かいたぜぇ)

⚠️多くの方にご覧になってほしいので立て続けにレビューしましたが、コメント返しは遅くなる場合がありますので、ご了承願います🙇‍♂️
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