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異人たちのTakaCineのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.8
【心のしこりを剥がす】
心で観る映画😢

とても私的でありながら普遍的な愛の物語でした。

人間1人1人が心に秘めた孤独・喪失・痛み・恐怖などをしっかり向き合い、自然に手放す救済(解放)について描いていましたね。

登場する誰もが繊細で優しく悲しげで…

冒頭からやたら静けさが怖かったです(それがのちほど理由が分かると愕然💦)😰

山田太一さん原作『異人たちとの夏』の二回目の映画化(一回目は1988年大林宣彦監督作)で、原作部分の「主人公が他界した両親と邂逅」と本作のアンドリュー・ヘイ監督が表現したい「クィアならではの人生」を融合…観ている内に…なんだか琴線に触れてしまって、鑑賞後もずっと映画の世界を漂ってました😅

主人公アダム(アンドリュー・スコット)と恋人ハリー(ポール・メスカル)の孤独を埋め合う繊細な恋愛模様は『燃ゆる女の肖像』(2019)が好きな方ならハマるでしょう!

僕はアダムに共感できる点が多かったです。

私事で言えば、両親を亡くしている点(アダムは10代、僕は30代の時)と、幼少期に凄く孤独を感じていた点(両親や周りに馴染めなかった)が共感できて、特にアダムの苦しみや痛みが観ていて一緒に苦しくなりました😭

アダムは幼少期の傷(トラウマ)や両親との溝を癒すために…夢か現か…邂逅した両親との和解、恋人ハリーとの交流を通して、過去の自分を癒し心の「しこり」を剥がしていきます。

「怖いよ~」と言う言葉に

何度も
「愛しているよ」
「一緒にいるよ」

一旦亡くなってしまったからと諦めていた、両親からの愛情や承認…どんなに大人になっても、その気持ちが消えることはありません。

もしそのチャンスがあるなら?また会えるんなら?って…僕も未だに心底で思います😌

きっと、ヘイ監督自身もそんな想いがあるのでしょう。アダムの実家の撮影場所は、監督自身が幼少期に住んでいた実際の家だそうです🏡

また原作からの改変として、アダムの両親によって突き付けられる、80年代と現代のクィアに対する認識の違い(無理解や偏見)が赤裸々に出てくるので、アダムやハリーがどれほど孤独感や絶望感を持っていたかが痛いほど伝わります😭

過去の実家も現代のタワマンも、(外部と遮断し)意識が囚われた牢獄に思えました。

アダムが乗る電車が異世界へと続く描写は『千と千尋の神隠し』(2001)みたいで面白かったですね。

そして悲しい恋人たちであるアダムとハリーの姿は、『怪物』(2023)を思い出させました✨

全編に流れる80年代の洋楽が懐かしかったですね♪

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「パワー・オブ・ラヴ」が印象的に使われてます(彼らだと「リラックス」が有名でしたね)😌

ペット・ショップ・ボーイズの「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」の歌詞が泣けますね😭
クリスマスツリーの飾り付けで、母親が歌詞を口ずさんで気持ちを伝える場面に大泣き😭💦(父親とのハグシーン、鏡の使い方もヤバい)

「異人たち」として、「All of Us Strangers」だから「愛情」でしっかり受け止めることが必要なんだね。

自分も実感しますけど…男は、外見は大きくなっただけの中身は子供…なところあります(笑)
アダムが上手く体現していましたね😉

ヘイ監督の言葉を載せます。
「私たちみな、同じことを求めています。理解され、愛され、癒やされたいのです。山田さんはうまく表現していて、共感しました。この世界では、互いの違いばかりに目を向けていますが、根底にある同じ部分を理解することが大切なのです。だからこそ、私は映画を作るのです」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240419/k10014425831000.html

テレビ録画したんですが、『異人たちとの夏』はまだ観てないので、こちらも観てみます😌(原作に忠実らしい)

⚠️(直接的ではないですが)男性同士の性愛場面があるので鑑賞にご注意ください(R15+)
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