matsukawa

天気の子のmatsukawaのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.0
ポップな絵柄で明るく描かれる、現代日本の若者の貧困。

風俗で働くしかないほど追い詰められた未成年の少女と、無給同然でいいように使われる少年。
搾取されている少年が無自覚に少女を搾取する存在になっていく残酷さ。
少女に自然(神)と繋がる巫女的な役割を負わせるのも、現実の性搾取構造を反映しているようで、「君の名は。」よりも更にグロテスクに感じる。

その多くは善良な人々で構成されている社会そのものに、真綿で首を絞めるように優しく殺されるつつある少女。それに気づいた少年が銃を向けるのは、恩人であり、理解者であり、同時に搾取者でもある男。(たぶん既得権益者全体を象徴している)
その後、ダメ押しのように銃口はスクリーンのこちら側に向けられる。

旧世代の尻拭いをハッキリと拒絶するこの映画が、メジャーど真ん中で作られてヒットしたというのは、かなり大きな事ではないかと思う。

「考えさせられた」という感想はバカっぽくてあまり口にしたくないのだけど、この映画には本当にいろいろな事を考えさせられたし、まだ考え続けている。

重要度という意味では満点にしたいところだけど、いつも新海誠に感じる無神経さや気持ち悪さは(後景化しているとはいえ)健在なので、どうしても好きにはなれない。でも凄く「面白い」のです。
もっと早く観るべきだった。
matsukawa

matsukawa