まぬままおま

Beau(原題)のまぬままおまのレビュー・感想・評価

Beau(原題)(2011年製作の映画)
4.0
ボーのために。

アリ・アスターの初期短編作品!おそらく『ボーはおそれている』とは全く無関係だが、とてつもなく面白い。

自主制作であろう短編なのだが、スーツケースに荷物を入れるカットでは、アリ・アスター作品であることを感じさせる気持ち悪いカメラワークが手持ちカメラでもあって笑ってしまった。

また「恐怖や不安で眠れなくなること」は、アリ・アスター作品に特徴的な主題であると思うから、それが本作にもあって嬉しかった。

以下、ネタバレを含みます。

男がスーツケースでどこかに出かけようとしている。家を出て鍵を閉めようとしたときに忘れ物に気づいて2階に戻る。しかし戻っている間に、鍵穴に刺していた鍵がなくなってしまう。
何者かに鍵を盗まれてしまった。いつ何者かが家に侵入するか分からない。隣人も管理人も助けてくれない。不安が魂を食いつくす。彼は眠れなくなり、侵入者に備えて武器を備える。鈴を取り付ける。ネズミ捕りを大量に設置する。包丁を矢にしたボーガンを扉にずっと向けている。彼は恐怖と不安に取り憑かれている。
しかし何者かは扉ではなく窓から侵入して、彼と鉢合わせた途端、ナイフで自分の指を切り落としてしまう。窓から侵入するのは恐ろしいが、指を切り落としてしまうのは笑ってしまった。恐怖と笑いのバランスもさすがアリ・アスターと思ってしまった。

お母さんが獣なのはどういうこと?と思いつつ、アリ・アスターの恐怖の技法の根幹にあるものが垣間見えてとてもよかったです。