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映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2019年の日本の作品。

監督は「映画レイトン教授と永遠の歌姫」の橋本晶和。

あらすじ

新婚旅行に今更行ってないことに気づいたみさえとひろしは、みさえが見つけてきたオーストラリアにあるグレートババァブリーフ島に家族同伴で新婚旅行ツアーに行くことになる。しかし、旅行中、ひろしとみさえが夫婦喧嘩をしてしまい、その上ひろしが何者かに拐われてしまう。残されたしんのすけたちはトレジャー・ハンターのジュンコと共にひろしを取り戻そうとするのだが…。

最近の劇しん(と言っても4作前)でまだ観てなかったこともあり鑑賞。

そして、今作テレビ朝日開局60周年記念作品であり、平成最後の劇場公開作であり、そして初代矢島昌子から、遂に二代目を引き継いだ小林由美子が初めて劇場版でしんのすけを担当する作品と色々と「節目」を思わせる作品となっている。

そして、今作はあらすじの通り、野原一家にスポットが当たった内容となっている。野原一家で海外ものというと、同じ橋本監督の「オラの引っ越し物語」を彷彿とさせるが、あちらはメキシコでなおかつひろしの転勤による引越しだったのに対して、今作はあくまでひろしとみさえの新婚旅行でなおかつオーストラリアとバカンスの度合いが強い。

というわけで新婚旅行でオーストラリアのグレートバリアリーフならぬグレートババァブリーフ島笑に飛行機と船を乗り継いでやってきた野原一家なわけなんだけど、コアラと家族写真を撮ったり、ビーチでゆっくりしたり、ダンスパーティーでひろしとしんのすけが踊り狂ったりとそれこそかなりオーストラリア旅行を満喫しているのがまた新鮮。

何度か海外が舞台となる劇場版はあったけど、過去一満喫してるのでは?

ただ、今作ではワンシーンの登場だけどなったカスカベ防衛隊のネネちゃんが予期していたように新婚旅行とは夫婦の「愛」が試される場でもあり、ひろしとみさえは些細なイライラと行き違いが積み重なって、遂に大げんかをしてしまう。

で、その陰で暗躍する謎の仮面族によって、なんとひろしが拐われてしまう。

なぜ、ひろしが拐われるのかについては後々わかってくるんだけど、マリオにおけるピーチ姫然り、古い考えだと女性であるみさえの方が拐われても良いようなものの男性であるひろしの方が拐われるという点が現代的。

で、その結果、本作全体的にみさえ寄りに比重が置かれている。

そのために重要なのが、今作のゲストキャラ、トレジャーハンターのインディ・ジョーンズならぬインディ・ジュンコ。

この手のヒロインポジにしては極めて珍しく、このジュンコ、極めて自己中心的というか、利益重視で成り行きで同行することになったみさえたちに対しても初めは仲間というよりかは「お宝」を探すための利害の関係性であり、「母親」であり「妻」であるみさえに対してもどこか冷ややかで辛辣なのが印象的。

で、そんなジュンコを加えての道中、大家のインディよろしくボタンタイプの設置型罠にハマったり、川に浮かぶポイントをジャンプして渡ったり、トロッコ上でオオカブトと呼ばれる巨漢の男とバトったりと、本家並みにアドベンチャーしていて楽しい。

特に洞窟内で次々に押し寄せる顔型やポーズの岩型パネルを矢継ぎ早に潜り抜けるシークエンスはクレしんの元々の馬鹿馬鹿しさと相まってめちゃくちゃ楽しかった。

ただ、その中でもジュンコはみさえたちを「足手まとい」としてしか感じておらず、なぜ幼子を連れてまで「ひろし」に固執するのかでみさえと意見を衝突させる。

しかし、ひまわりをおんぶしてまで「肥後もっこす〜(みさえの故郷、熊本弁で「頑固者」の方言)」と頑張る姿を見たり、実は道中背負うリュックの中にはひまわりのおむつや哺乳瓶、おもちゃなど重い荷物を抱えていたことを知り、段々と母親としての「強さ」を知っていく。

で、その中でも特に印象的だったのは、後半、遂にひろしの元に辿り着いた一行なんだけど、そこでひろしに冷たくあしらわれ(実は裏に仮面族が控えており、みさえたちを逃すために強がっていたことが後半ちゃんとわかる)、その後敵の罠にハマって落とされた地下牢内で、それまでずっと自分の感情を押し殺してまで奮闘していたみさえの感情が爆発してしまうんだけど、しんのすけに「ひまわりの耳を押さえて、自分の好きな歌を歌ってて!」という遊び?を提案しつつ、ジュンコには歌うしんのすけの耳を塞がせ、自分は大樹の裏に隠れて「ふざけんな!」と怒り狂い、そして最後には涙を流して悲しんで、感情を全て吐き出した後、戻ったしんのすけたちの前では「母親」としての姿として戻ってくる。

強い、強すぎる。いくら強がっているとはいえ、あれだけ頑張った挙句に冷たく追い出されても、なお我が子に心配をかけまいとそれでも自分を奮い立たせる…みさえの母親としての強さを改めて感じた。

そして、それはその一部始終を見ていたジュンコも感じていたようで、そこで遂にみさえを見る目や考えを改め、仲間として仮面族に立ち向かう!!

そう、だから本作、もちろんひろしはひろしで家族を想う描写もあって、めちゃくちゃいいお父さんなことは間違いないんだけど、個人的にはみさえとジュンコによる「シスターフッドもの」としても非常に良くできた作品となっている。

まぁ、後はインパクトがあったのが序盤、拐われたひろしを乗せた仮面族のコアラ型の汽車をしんのすけたち、ジュンコ含めたトレジャーハンター軍団が追っかけるくだりがあるんだけど、そこがバックで流れる雄々しい太鼓の音楽然り、爆走感のあるショット含めて完全に「マッドマック怒りのデスロード」オマージュで笑ったwこういうトレンドもサクッと入れてくる感じもまた良いよね。

また、今作ここのシーン含めて銀河万丈とか大塚明夫とかめちゃくちゃちょい役なのに大物声優を使っててぜ、贅沢すぎるっ!!

あと、声優でいうと前半と後半にそれぞれひろしが歌う福山雅治の「HELLO」とみさえが歌うMISIAの「Everything」の劇中歌シーンがあって、それぞれ2人の声優さんである森川智之とならはしみきが歌ってるんだけど、やっぱ声の仕事してるだけあってまた本家とは違うテイストでいいなあ笑。

あとは姫の意外な正体が分かったりした後はまた違う雰囲気になっていく部分含めて、全体的に楽しさ溢れる作品となっているんだけど、やっぱ内容的に独り身には堪える作品ではあったかな…泣。

俺も早く人生懸けて夢中になれる「お宝」を見つけてー!!
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