kazata

ウエスト・サイド・ストーリーのkazataのレビュー・感想・評価

3.5
スピルバーグ初のミュージカル!しかも超有名作のリメイク!!もちろん本年度アカデミー賞複数部門ノミネート!!!!……ってことで期待値高めで劇場ウォッチ。

観る前は頗るテンション高めだったのに、すっかり失念してました……そもそも、オリジナル版が苦手だったということを。
ってか、(古典だから仕方ないとは思いつつ)ぶっちゃけ『ロミジュリ』(的な悲劇)も好きじゃないし。そんなわけで、色々と現代版へのアップデートはなされていたものの、物語的な面ではやっぱり最後までノレずじまいでした。
(現代において『ロミジュリ』は否定する文脈で引用してこそ感動できると思う派…)

なんだろ、『レディ・プレイヤー1』ではまだ若者たちに対しての希望を描きつつ「ゲームばかりやってないで現実世界を大切にしなきゃダメだよ」という説教臭さ=人間味が感じられたのに、本作の貧困層の若者たちに対しては(オリジナル版に則しているせいもあって…)「だからお前らはダメなんだ」的な感じで突き放す&見限っているようにも思えてしまって、「スピルバーグ監督作にしては優しくない映画だな」という感想を抱いてしまいました。
(滅びゆくバカ同士の争いを高みから諦観しているような印象…)
(上下間=富裕層と貧困層の格差問題への言及がほとんどないし)

"高さ"を生かした演出もイマイチ惜しい気がして……トニーとマリアの最高到達点がマリアの部屋止まり(だった気がする…)じゃなくて、"二人ならもっと高い位置に行けた"(屋上とかでいいから)ってシーンがあれば、より悲劇が際立って良かったんじゃないかな。二人にとっての最高到達点で結ばれるのが理想に思えるんだけども……現状だと「マリア側の高さ(位置)の変化にトニーが影響していない=トニー側の視点優位なまま」に思えてしまう。
(意外と簡単にバルコニーまで行けてしまうのもなんだかなぁ…)

……と文句ばかり言ってしまいましたが、もちろん素晴らしいところも多々あって、特に撮影面でそれを感じました!

まず、ミュージカルシーン。結局は"舞台み"が強かった(時代的に仕方ないが…)オリジナル版に比べて、本作は"現実と地続きの空間内でのミュージカル感"がかなり強く感じられてグッド!
(ミュージカルシーンでの撮影技術力がハンパないってば!)

あと、"フェンスを乗り越える"的なショットは往年のスピルバーグ作品でも頻出するショットだけども、そこには"境界線を越える"ことで"それまで知らなかった世界の存在を知る=外の世界と対峙する"的な意味合いが込められていて……本作でもそれが大事なショットになっているのでナイス!

そして、"銃を巡る一連のやり取り"(銃がリレーされる流れ…)は、どこか『インディ・ジョーンズ』的なコミカルさを含んだアクションシーンになっていて楽しかったし!

決闘場に入る時の"シャッター"のシーンとか、さり気ないけど前フリとして秀逸!


(以下、ラストシーンに触れます…古典作品にネタバレも何もないとは思うけど↓)

極めつけは、一連の悲劇を映し出した後でちゃんと"バルコニー"を映しこむショット(オリジナル版は単なる引き絵)にする辺りが流石よね……このラストカットだけで泣けるほど素晴らしいってば!
(そんなわけで、ヤヌス・カミンスキーがアカデミー賞の撮影賞を受賞しても大納得!)
(編集賞での落選がWhy!?)

そんなわけで、オリジナル版が苦手な自分でも全く飽きることなく観れた、安定のスピルバーグ印なエンタメ映画でした。
(でもアカデミー賞的には助演女優と衣装ぐらいまでな気がする…)

そして、イーストウッド最新作『クライ・マッチョ』同様にスピルバーグもまた「ファッキン・マッチョ!」(="古き良き男像"なんてくだらねー!)を描いているのが同時代的で興味深いところですね。

あと、これは完全に余談だけども……
Siaの分身ことマディー(ジーグラー)ちゃんのキレッキレなダンスがこちとら見たかったのに、モブキャラの一人(ジェッツ側女子メンバー)ってことで結局どこにいたのかよくわからん!笑
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