よしおスタンダード

象は静かに座っているのよしおスタンダードのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
3.7
No.3837

『この映画を評する言葉を、私はまだ持たない』
『孤独の可視化に、あなたは耐えられるか』
『映画史上、最大級に陰鬱な映画。ただただ暗い。しかし美しい』

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被写体をこれだけ執拗に、ねめまわすように、前後左右から、何かを搾り取るように撮り続けている映画を、他に知らない。

その被写体、登場人物たちへの執拗な接写、その一挙手一投足、息遣いまで逃してなるものか、という徹底した長回し。

タルコフスキー的ともいえるし、アケルマン的ともいえる。
尋常じゃない陰鬱さは、トリアーの『メランコリア』のようですらある。

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彼らに近づきたい、彼らから何かを得たい、彼らと一緒に現世から逃げ出したい、そんな監督の願い、焦燥感まで私には伝わってきて、痛切すぎるのであるが、

それなのに、彼らのほうから伝わってくるのは、「孤独」「断絶」「喪失感」ばかりで、「一日中座っているだけの象」を見に行くというのは、

もう極楽浄土を目指す架空のロードムービー。

「念仏を唱えれば死んだ後に極楽浄土に行ける」との教えを胸に、自殺者が急増したという日本の鎌倉時代のようだ。

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■よしお的関連作
・牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件
・長江哀歌(ちょうこうエレジー)
・EUREKA ユリイカ
・少年の君
・エレファント
・明日、君がいない
・ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン
・メランコリア