KnightsofOdessa

Revanche(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Revanche(原題)(2008年製作の映画)
4.0
[孤独な人々の静かなる希望] 80点

黒々とした木々が反射している不気味なほど静かな湖の水面に石が投げ込まれ、小さいが確実に波紋を広げていく。ある種の神秘すら感じさせながら、静けさと波紋という、本作品を象徴するようなシーンで幕を開ける。本作品には二組のカップルが登場する。一組目は刑務所あがりの娼館の用心棒アレックスとそこで働くウクライナ人娼婦タマラ。二組目は田舎の一軒家に暮らす警察官のロベルトとその妻ズザンネ。孤独な彼らの人生はある瞬間を以て共鳴しあい引き寄せ合っていく。用心棒と娼婦が銀行強盗を企てるという典型的な設定や、タマラを図らずも殺してしまった警察官に隣人ハウズナー(=アレックスの祖父)の世話を焼く奥さんという込み入った人間関係、そしてストレートに訳せば"復讐"という意味になる題名から考えると、ドロドロとした復讐物語が錬成されそうな気もするが、光と鳥の囀りに満ちたある種の"希望的な"物語になっているのだ。特に顕著なのが、後半でテラスに出てきたロベルト・ズザンネ夫妻を森の中からアレックスが眺めているシーンで、復讐のタイミングを伺って様子を見に来たアレックスから右にパンすると夫婦がタマラを殺してしまったことを悔いていて、いつの間にか夫婦に寄り添っていることに気付かされるとこだ。こうして静かに、だが着実に希望へのステップを踏み固めていく。

窓や扉を多用したフレーム内フレームも美しいが、一番印象的なのはカメラが移動した先に別の人物がふと映り込む瞬間だろう。画面に常に厳格さがある中で、唐突に訪れるそうした瞬間は抗えない運命と偶然性を同時に感じるものになっていて、その対比は中々上手い。それとは対照的に、ハウズナーを含めた五人の人物は、肉体的/精神的な自己表現を積極的に行っていて、それをそれぞれが理解している点も興味深い。抗えない運命を含めた全てがラストシーンの希望に結びついているのだがら、その凄まじさに感服。
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