鮎

ジョーカーの鮎のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0
泣き笑いの演技で
これ以上に痛々しく見せられる役者を
見たことがない。
主演俳優の演技力に驚く。
どこからどこまでが彼の妄想なのか
わからなくなる演出。
クライマックスに向けてが特に
引き込まれた。

貧富の差の拡大による富裕層への苛立ち、
精神疾患をもった者への世間の目、
少数派への風当たりの強さ。
ズルい人間がいい立ち位置で
いい思いをして豊かに暮らし、
素直に生きている人間が損をし
過酷な暮らしを余儀なくされる。
誰にも許容されず理解されない
底のない絶望。
この世は救い用のない世界で、
それでも生きていかなくてはいけない
生き地獄。

異常なままでいることを選んだ彼が
あまりにも軽やかで開放的で、
何が正解か不正解かわからなくなる。
殺人すら肯定的に見えてしまうくらい。
弾の入っていない銃弾を
自身の喉に突きつけるときの表情が
頭から離れない。
喜劇と捉えることを無理やり選び
正気を保っているような危うさ。

採用された劇中歌が穏やかでおしゃれで
それも不気味にマッチしていて
よかった。

精神異常者の承認欲求の暴走と捉えるか
時代や現実世界がそうさせたと捉えるかで
好みは分かれそう。

舞台は1970年80年代。
正直、今の日本の貧富の差も
この時代のこの作品のように
なってしまいそうだと
個人的に思っている。

日本語吹き替えで見たが
声がアリスインワンダーランドの
ジョニーデップを思い出して
狂気的な雰囲気とぴったりだった。
調べたら平田広明さんという声優さん。
覚えた。
鮎