kazata

傷のkazataのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
4.0
以前から見たかった南アフリカのイニシエーション映画で、大好きなイタリア映画『チャンブラにて』とはまた異なるタイプの"大人の男になる痛み"を描いた、なかなか見応えのある青春映画でした。
(自分のイメージとは全く異なる南アフリカの前時代的な文化が垣間見える興味深い一作でもありますね…)
(ドキュメンタリー風な撮影スタイルは『チャンブラにて』とかダルデンヌ兄弟監督作品っぽくて良き!)

"性役割"を押しつけてくる=過剰に求められる社会における苦悩を描いた映画だと『82年生まれ、キム・ジヨン』なんかがあるけど、ある意味で本作はその男ver.と言えるかも。

マッチョイズムがゴリゴリな環境下で同性愛を秘かに育み続けてきた村出身の幼馴染み青年二人の物語と、都会人でありながら田舎の伝統儀式に参加させられた少年のcoming of ageとが入り混じって描かれていくんだけども……もうちょっと少年の心情の変化に寄り添って欲しかったかな。
(現状だとラストの衝撃展開を迎えた時に、そこまで少年に肩入れできない気持ちになっちゃう…)

(衝撃展開と言いながらも、ちゃんとあのラストに至ることが予想できるような論理的でわかりやすい作りになっているから驚き自体は薄いけど、その選択に至った意味合いを思うと深い…)

(二人の青年にとってあの"滝"がいかに大切な場所であるのかがわかった時は感動!)

「こんな時代遅れ&いろいろと問題の多い悪習なんてやめてしまえばいい」と外から言うのは簡単だけども、悪習と言えども伝統文化として地域に根づいているものを否定するわけにもいかないし、二人の青年にとっては儀式の期間だけが"昔の関係"に戻れる幸せな時間だったんだよね。
(悪習はその文化圏の中で廃れていくのを待ちつつ、そこからの逃げ道=それをしない選択肢を社会が受け入れる=多様性の尊重…ってことしか解決策は無いように思うなぁ)

(非科学的で不衛生な割礼は性器切断や合併症による死亡リスクほか、割礼失敗→男失格の烙印→自殺に至ることも多々あるそうです)

(本作中でもチラッと語られるけど、病院で手術したら「チキン野郎で真の男じゃないぜ」って馬鹿にされたりするらしい…)
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