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踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.7
【理想と現実】

これが劇場公開されたのって1998年か・・・
日本がワールドカップに初めて出た年だ。
そうそう、僕は前の仕事(車の営業)を辞めて大阪や京都に「自分探しの旅」に出た年だ。
今になって思うと、あの時は本当に色んな出会いがあって楽しかったな~。
大阪~京都で自分を見つけられたのかは定かではないけど、少なくとも飛行機や宿の手配など、今まで誰かがやってくれていた事を「自分でやる」っていう責任と自信はちょっとだけ身に着いた気はする。

で、そんな頃に出会った、とある「映画好きなお姉さん」
僕なんかよりも遥に映画に詳しくて、かなりニッチな作品なんかもよく観ていた人。
ちょっとカッコよくて憧れてもいたんだけど、ある時「今度dm君が観たい映画を観に行こうか?」って誘ってくれて、本当に何の思慮も配慮も遠慮も知らないdm小僧は「じゃあ、これが観たいっす!」って自信満々に選んだのがこの作品でした。
(dm君らしいね)
お姉さんは笑ってくれましたが、あの時は「しまった~!もっとカッコいい映画にしときゃよかった~」なんて猛烈に後悔して、穴があったら自分から入りますので上から土をかけて下さい・・・っていうくらいに恥ずかしかった(笑)
でも、今になって思えば、変に背伸びして興味もないフランス映画のタイトルを言ったところで、薄っぺらい事が秒でバレただろうし、もっと強烈で猛烈で激烈な恥かいていたような気もする・・・。

懐かしいな~
結局お姉さんは結婚のタイミングで東京に行ってしまったっきりもうお会いしてないけど、お元気でしょうか?
(一応大人になったdmは「配慮」を知ったので、パートナーがいらっしゃる女性には用もないのに連絡はしません)

ってな感じの「淡い淡い思い出」込みのこの映画。

当時は「刑事ドラマ」という枠以上に「青島と室井の関係性」がカッコよく見えて、友達同士で飲んだときなんかでも「室井さんみたいに部下のために体を張ってくれる上司って憧れるよな~」「だよな~」みたいな話で盛り上がっていた記憶がある。

それはそれとして。
あの時は本当にそう思っていた。

でも時が流れて、dmも青年から中年になり、いつしかこの作品を観る視点も「青島目線」から「室井目線」の方が近くなってきた。

そして改めて感じる「理想と現実」。

今の自分の立場からするとね、室井さんの立場って本当にリアルなんですよ。
特に世の中にどんどん「平成生まれ」の新世代が出てくると、僕らの、いわゆる「昭和世代の常識」はもう通用しなくなってきて、でも彼らは彼らなりに一生懸命物事を考えたりもしているわけで(そうじゃないのもいるけど)、そういう子たちに対して「自分の時とはアプローチが違っていても、同じゴールに辿り着くためにはどうしてあげるべきか?」っていう知恵と経験を伝授するのが「先輩」や「上司」の存在意義だと思うようになりました。
失敗を怒るだけが仕事じゃないんです。
そんな中で「自由奔放な後輩」と「旧態依然な上層部」の間に挟まれた「胃もたれMAXの中間管理職」としてとてもわかりやすい存在が室井さんなんですね。

穿った言い方をすれば、室井さんって「不器用の権化」なんですよ。
もっと上手に立ち回れば上司からは目を付けられずに、部下は適度に飼い慣らして・・・って出来なくもない。
だけど、それって絶対「嘘」とか「妥協」とかが必須になってくるんです。必ずどこかで。

でも、室井さんはあくまでも真っすぐなんですね。
それは青島との約束でもあるしエリートコースではなく叩き上げである自分自身の信念でもあるのかもしれない。

それでも、部下にしてみたら直撃必須の雷から身を挺して守ってくれる上司はやっぱり憧れるし「理想」にもなるんですよね。
それもよくわかる・・・
よくわかるから、ギリギリまで頑張って壊れちゃう人が出ちゃうんだろうな・・・。
「理想」はあくまでも「理想」という距離感を間違えてしまうと、逆にそこに辿り着けない自分を責めてしまう・・・。

「嘘をつけ」とは言わないけど、現実ってやっぱり100%自分の思い通りになんかはならなくて、どこかで凹んだり庇ったりしあいながら成立してる部分って少なからずあって、そのためには自分を曲げたり、自分を引っ込めたりだってしなきゃならない場面だって出てくる。

≪現実はそんなに甘くないんだよ≫

だからこそ、人は理想を捨てないんじゃないかな?
「こんな上司がいたっていいじゃない」って、どこか理想論っぽさも残るくらいの憧れがあったほうが、自分の目指す「像」のモデルにもなるし、最初に理想があるからこそ「味気ない現実」がちょっとずつ変わっていくのかもしれない。

若かったdmは、青島君に憧れて「モスグリーンのモッズコート」っぽいのを着てた時期もありました(ちょっと恥ずかし・・・)
でも、その「憧れ」のお陰で青島君のように「バカみたいに一生懸命な奴がいてもいい」って思ってた。
それは自分でも他人でも。
そういう「憧れ」って自分自身にも余地や余裕を作ってあげられる気もするし、最初からガチガチの「現実論」だけで答えを決めつけるよりもいいと思う。

年を取って「現実」を知ったからこそ「理想」の大切さを知る・・・・なんてな。

そしてあの「映画好きなお姉さん」との淡い関係の中にもあった「理想」と「現実」。
あの時に感じたり考えたりしたことは、本当に今の自分の幹となっている気がする。
今となっては本当に感謝しかないです。
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