TAK44マグナム

ライリー・ノース 復讐の女神のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.5
絶対に、許さない。


家族を麻薬組織に殺された普通の主婦が復讐に立ち上がる、ハードタッチなリベンジアクション。

「バットマン」の新作で主演のみならず監督も予定していたベン・アフレックがそのどちらも降板。
その理由のひとつとしてあげていたのが「デアデビル」の共演で知り合い結婚、そして破局したジェニファー・ガーナーとの離婚を後悔していることでした。
そんなジェニファー・ガーナーが主演しているのが本作。
「デアデビル」及びそのスピンオフである「エレクトラ」でスーパーヒロインを演じ、アクションも出来る強い女優さんのイメージは既にあったわけで、5年間鍛えたら何の変哲もなかった主婦が凶悪な野郎どもを圧倒できるようになるというファンタジーにも説得力があります。
そういう点で、まずは合格でしょう。

お話としてはチャールズ・ブロンソンが悪党どもを嬉々として撃ち殺す「狼よさらば」、またはそれを女性主人公に翻案したジュディ・フォスター主演の「ブレイブワン」と同様、愛する者を奪われた弱者が武器を手に取ることによってハンターとなり復讐を遂げていく姿にカタルシスを得て、更にその行為の是非を問うような作品なのですが、それほど社会派な要素にはフォーカスしていません。
その点では、ストイックなクレイジーさが肝である「狼よさらば」よりも、より派手な娯楽志向にふった続編の「ロサンゼルス」や「スーパーマグナム」に近いような気がします。

重たい内容のはずなのに割とサクサクと進み、「復讐」というメインテーマ以外は削ぎ落としたスパルタンな仕様。
余計な無駄もないが、そのぶん面白みも多少スポイルしてしまっていると感じました。
一番それが如実なのが「空白の5年間」についてあまり言及されないところ。
どうやら世界各地を転々として、地下格闘技の試合などにも出場していた記録が語られますが、普通なら「どうやって強い戦士へと変貌をとげたのか?」という説明があって然るべき部分がほぼ端折ってあるのは逆に新鮮であり、観る人によっては物足りさを感じてしまうかもしれません。
「修行」を見せないということは、昔のジャッキー・チェンの映画で例えれば「90分の尺の映画なのに修行シーンを削ったら1時間もない」という事態であってもおかしくないし、そもそも「強くなる」というカタルシスを得にくくなります。
漫画の「ワンピース」も割と唐突にキャラクターがパワーアップしていますが、他のドラマ部分が濃密なのでストーリーが停滞しがちな修行部分はアッサリで済ませているのかもしれません(勝手な想像ですが)。
何にしろ、本作はいきなりストロンゲストな女戦士と化した「元は普通の主婦」が、のっけからギャングを処刑しまくるという爽快感(及び主人公の喪失感や悲壮感)を最重要視した娯楽映画であると言えるでしょう。
思考を捨てたように紋切り型で主人公を応援する一般層がSNSにあふれまくるところからして、主人公は「絶対正義」であり、その点からすると「エクスタミネーター」シリーズが最も近しいのかもしれません。
いずれにしろ思慮深くはないテイストからして、一貫してアクション派の監督であるピエール・モレルっぽい作り。
こういった系統が好みであれば安心して楽しめるのではないでしょうか。
ただし、キアヌ・リーヴスがただ暴走しまくるだけの薄っぺらい話に戦慄した「レプリカズ」の脚本家なので、底は水深1ミリ並に浅い(苦笑)。
ドラマティックな意外性がないのは、ジェニファー・ガーナーの折角の熱演を反故にしている、本作最大の難点だと思います。


ジェニファー・ガーナーは程よく鍛えているのがボディスタイルや肌の質感からもよく分かり、近接距離で確実に撃ち抜く「ジョン・ウィック」みたいな戦闘法も銃の構え方からして非常に格好良く、様になっていますね。
序盤の幸せそうな主婦とは180度違った、復讐鬼のやさぐれた雰囲気も見事なギャップが大変宜しい(それでいて弱者に向ける「優しい母親」な眼差しも良い)。
また、直接的な仇である犯罪者たちでなく、自分を陥れた司法関係者まで漏れなく抹殺してゆくのも溜飲が下がります。
個人的には判事よりも弁護士のほうが頭にきたので爆弾入りのウ●コ食わせるとか魅せてほしかったかな。
しかし、いくら強いといってもそこは女性です。
シュワちゃんやロック様じゃないんですから、人知れず、遊園地でギャングを3人も吊るすのは、いくらなんでも無理があるのではなかろうか。
きっと運ぶだけでもひと苦労だよ(汗)

圧倒的な無双シーンは二箇所ほどで、観ていてバトルアクションの比率は全体的に決して高くないように体感。
肝心のクライマックスでは無双しないので、少し物足りなく思いました。
それでも、相当数のギャングを地獄送りにしますけれどね。
情け容赦なんて全く無いです。
娘ちゃんが可愛かっただけに感情移入できるので、悪党がいくらゴミ屑と化そうともまるで気になりません。
なんなら、あと100人ぐらいブチ殺してくれたほうが街がより平和になって助かるってものです(←「狼よさらば」理論)。


ド派手な爆発や復讐劇がお好きな方にはスカッとするのでオススメ。
楽しい誕生日を悲しい地獄に変えるような奴らには絶対的な死をプレゼントしてやりましょう!
ついでに嫌なママ友にもグーパンくれてやりましょう(苦笑)!


最後に余談ですが、敵のボスが「コマンドー」のベネットに見えて仕方がありませんでした(苦笑)。


セル・ブルーレイにて