Hiroki

REVENGE リベンジのHirokiのレビュー・感想・評価

REVENGE リベンジ(2017年製作の映画)
3.7
カンヌコンペ予習なのでまずは今年のカンヌ情報から!
ちょっと上映に関するネタバレ的な要素もあるので嫌な人は2行改行まで飛ばしてください。

オープニングのカンタン・デュピュー作品からレッドステップ&フォトコールにレア・セドゥ登場。彼女は最近のカンヌでは常にミューズなっています!

さらにプレミアのジョージ・ミラー『マッドマックス:フュリオサ』にアニャ&クリヘム、そしてなぜかたぶん関係ないバズ・ラーマンも登場。
上映後は8分間のスタンディングオベーション。カメラがきた所からジョージ・ミラーへパスするまでのアニャの完璧な立ち振る舞い!まさにスター。
ちなみにフュリオサ役のアニャは今回セリフが40行ほどしかなかったらしい...150分あるのに...
日本でもすぐに公開になるので楽しみ!

コンペは注目していたアガト・リーディンジェ『Wild Diamond』からスタート。彼女は長編1作目でコンペ入り。しかもフランスなのでかなり狭き門を潜り抜けての参戦。批評家による評価もまぁまぁのようなので楽しみなんだけど日本での公開は厳しいのかなー...
そして早くも映画祭最注目のフランシス・フォード・コッポラ『Megalopolis』登場!上映後は7〜11分のスタンディングオベーション(情報がまちまち)でコッポラもご満悦。評価は絶賛と酷評で真っ二つで「観客の9割は何をやっていたのか理解できていなかった」というポストや、リチャード・ギアは「これは頭のおかしい人間にしか作れない」とコメントしたとか。
しかも劇中でスクリーン前に生身の人間が登場してマイクに向かって喋る演出があり、これは未完成部分の一時的な修正ではなく意図された演出とのこと。
ん?どーやって一般公開するの?


ということで序盤から盛りだくさんなカンヌですが、コンペ予習②は次世代フランスを担うクリエイターのコラリー・ファルジャ。
コラリー・ファルジャは長編デビューの今作で一躍有名になったのだけど、彼女は同時期に現れた2021パルムドール『TITANE/チタン』のジュリア・デュクルノーと比較される事が多い。
理由はフランスの新世代の女性監督の中でも、女性性と肉体にフォーカスするジャンルを確立しているから。
正直な所でいうと私はあまり好みのラインではない。
同じ世代の女性監督でもセリーヌ・シアマやミア・ハンセン=ラブ、レア・ミシウスの方が好み。(シアマはもう新世代という感じでもないけど...)
なんというかファルジャやデュクルノーはフィジカルにフォーカスしすぎていてメンタルとか内面があまり描けていない(もしくはかなり独特な描き方になっている)イメージ。
まーここらへんは好みだと思うけど。

ちなみに今作同じようなポスタービジュアルで『REVENGE リベンジ〜』の〜部分に副題が入る映画がいくつかあるのですが、関係ない作品なのでお気をつけください。(そもそもそっちは原題全然リベンジじゃないので!)

内容的にはタイトルの通り男に裏切られた女性主人公ジェニファー(マチルダ・ルッツ)が復讐するお話です。
ファルジャがインタビューで話している通り『マッドマックス:怒りのデスロード』や『ランボー』の趣きがあって、またアメリカならブラムハウスが作ってそうだなーという感じもあります。
ただブラムハウスと違う所は物語に“意味”を持たせている所なんですよね。
個人的にこーいうゴアというか無茶苦茶やるタイプの映画ってあんまり意味は必要ないかなーと思っていて。
意味を持たせるなら上記のようにもっとメンタルとか内面の感情の揺れにフォーカスして欲しいし、「いや絶対有り得ないじゃん」みたいなシーンも極力減らして欲しい。
女性が自ら理不尽に立ち向かう姿とか、劇中たくさん出てくる虫、そして彼女に乗り移る不死鳥のイメージ。
やりたいことはとても良くわかる。
でもクソみたいな男どもを蹂躙するのに意味なんていらない。少なくともフィクションの中では。
ただ悲惨に意味もなく吹き飛ばせば良い。
そこにコメディ描写が少しあればなお良い。
その方法を取らないならやはりセリーヌ・シアマやエメラルド・フェネルのように丁寧に丁寧に繊細な描写を積み上げていくしかない。
結局、中途半端になってしまっているかなと感じた。

でも良い所もたくさんあって、主人公が3人の男に復讐するシークエンスが3つあり、特に後ろの2人のシークエンスはかなり丁寧に描写している。
足裏にささったガラス片を引き抜くシーンとか。
なんかあーいう所をサッと描かないでじっとり描くのはこの手の映画ではポイント高い。
砂漠とドバドバ出る血のコントラストも良いし、ほぼ4人だけで物語を完結させているのも凄い。
あとはファルジャが意図しているかわからないけど(たぶんしてない)コメディ的な要素。
これもー後半とか面白すぎて笑えてきちゃう。最後の追いかけっこシーンとか、こんなの絶対誰でも笑っちゃうじゃんというか。
あーいうシーンでずっと最初からやりとりしてた妻との電話で「いやその件は前に決めたじゃないか」みたいなシュールな笑いがあったら最高だったんだけどなー。
やはりこのタイプの映画はコメディとの相性かなり良いので、そーいう雰囲気がもっとあれば好みだったかな。

今回のコンペ作『The Substance』はマーガレット・クアリー、デニス・クエイド、デミ・ムーア出演の肉体を媒介にしたホラー作品とのこと。
そしてアメリカで撮影された英語映画らしい。
「肉体を媒介にした」って『TITANE/チタン』が想起される...

2024-16
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