kazu1961

幸福なラザロのkazu1961のレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
3.8
▪️Title :「幸福なラザロ」
Original Title :「Lazzaro felice」
▪️Release Date:2019/04/19
▪️Production Country:イタリア
🏆Main Awards : 2018年カンヌ国際映画祭
脚本賞
▪️Appreciation Record :2019-312
▪️My Review
本作は、前作『夏をゆく人々』で鮮烈な印象を残し、世界が注目した才能アリーチェ・ロルヴァケル監督最新作です。2018年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』と共にコンペティション部門で話題をさらい、見事脚本賞を受賞。北米公開時には、マーティン・スコセッシが絶賛したそうです。
物語は、実際に起きた詐欺事件から着想された寓話的ミステリー。ラザロの無垢なる魂がもたらす圧倒的な幸福感が見事に描かれています。そう、主人公ラザロは無垢なるものの象徴として描かれているんですね。
人間が享受してきた文明はそのスピードを加速させ、人間を疲弊させ、世界を荒廃させました。世界をありのままに見つめるラザロの汚れなき瞳はあまりにも無垢です。その無垢なる魂は人の心を浄化するものとして描かれています。そうして終盤へ近づくにつれ、この物語と映像表現は徐々に抽象度を高め始めます。人間たちの目には見えない狼が都会のただなかを彷徨い、ラザロに寄り添う。音に誘われ大聖堂を訪れたラザロを、シスターが追い払ったとき、パイプオルガンの響きがラザロを追って教会を捨て去るくだりは殊に象徴的です。そして思いもよらぬ展開を経て迎えるクライマックス。。
自然の厳しさと美しさを余すところなくスクリーンに映し出すのは、『夏をゆく人々』でも撮影を担当したエレーヌ・ルヴァール。今作もデジタルではなく、スーパー16mmフィルムで撮影された映像はほんと素晴らしいですね。

▪️Overview
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作「夏をゆく人々」などで世界から注目されるイタリアの女性監督アリーチェ・ロルバケルが、死からよみがえったとされる聖人ラザロと同じ名を持ち、何も望まず、目立たず、シンプルに生きる、無垢な魂を抱いたひとりの青年の姿を描いたドラマ。「夏をゆく人々」に続き、2018年・第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、脚本賞を受賞した。20世紀後半、社会と隔絶したイタリア中部の小さな村で、純朴な青年ラザロと村人たちは領主の侯爵夫人から小作制度の廃止も知らされず、昔のままタダ働きをさせられていた。ところが夫人の息子タンクレディが起こした誘拐騒ぎを発端に、夫人の搾取の実態が村人たちに知られることとなる。これをきっかけに村人たちは外の世界へと出て行くのだが、ラザロだけは村に留まり……。(映画.com参照)
kazu1961

kazu1961