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Museum(英題)のSY3KRのレビュー・感想・評価

Museum(英題)(2018年製作の映画)
3.0
無気力な獣医学生のホアンは、愚鈍な親友のベンジャミンと結託し、クリスマスの日に国立美術館から貴重なマヤ・アステカ文明の遺産を窃盗する計画を立てる。お祭り騒ぎで警備も手薄だったことから計画通りに事は進むが、事件は世界的なニュースとして取り上げられ、2人は事の重大さに気づく…というあらすじ。

メガホンを取ったのはメキシコの俊英、アロンソ・ルイスパラシオス。主演に人気俳優であるガエル・ガルシア・ベルナルをキャスティングしたが、日本では残念ながら見る手段がない。監督の名を知らしめた『グエロス』の時も感じたことだが、1つの事件を通じてメキシコの過去や歴史を実に分かりやすく教えてくれる。

作中の窃盗事件はほとんど実際に起きたことで、これをきっかけに世界中の博物館・美術館に対するセキュリティの認識が大きく塗り変わった。それだけではなく、本作ではメキシコがこれまで侵略・植民地化によって受けてきた「強奪の歴史」にも触れている。

お馬鹿な窃盗犯の末路を描いた点では同年公開の『アメリカン・アニマルズ』に非常によく似ているが、意味ありげなモノローグや回想を用い、芸術的に演出するあたりが心憎い&可愛げがない。

それにしても「事実は小説より奇なり」とは良く言ったもの。実際の主犯格カルロスは数年後に麻薬密売に関与したところから足がつき、窃盗に関しても逮捕された。しかし、刑期を終えて釈放された後に刺殺体となって発見され、この犯人は捕まっていない。共犯のラモンに至っては事件から30年以上経過した今も、行方が分からないままである。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:88%
・観客支持率 :74%
「本作は見慣れたジャンルの領域に、爽やかで新しい視点からアプローチを試みており、視覚的にも物語的にもエキサイティングだ。」
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