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ファースト・マンのSY3KRのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.0
『セッション』『ララランド』でその名を轟かせた神童デミアン・チャゼルが、ニール・アームストロング船長の半生に迫る実録ドラマ。

1960年代当時の時代性を再現しようと、撮影・セット・音楽に至るまで徹底的に作り込まれた一作。16ミリフィルムのザラついた質感や切ないテルミンの音色が、ひたすらにノスタルジーを煽る。

本作の目玉とも言える宇宙飛行シーンは、美しいというよりも恐怖そのもの。コクピットに搭乗する宇宙飛行士の目線から見る景色に圧迫感と閉塞感を覚え、心臓がギュッと縮み上がる。ロマン溢れるニュースに人々は心を躍らせるが、その影で何人もの犠牲が生まれていることを改めて思い知る。

何が起きても平静な彼の人生をドラマティックに描くのは、さぞ難しかっただろう。本作では一応、愛娘カレンの死が大きな影響を与えたとされている。彼女の死はアームストロングに深い悲しみ・後悔としてまとわり付き、決して離そうとしない。月へ向かうのも、死に一番近い場所で娘に会いたかったからなのだろうか。狂気に堕ちていくキャラ造形は相変わらずだ。

献身的な妻であるジャネットとの微妙な距離感も良い。広めのリビングにポツンとついた灯りの下、互いを理解し尽くした2人が手を伸ばして繋ぐ姿は地球と月そのものだ。しかし、2人の心は徐々にすれ違っていく。彼らは実際1994年に長い結婚生活に終止符を打つわけだが、最後のシーンの「隔たり」はその象徴に見えて何とも切ない。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:87%
・観客支持率 :68%
「本作は人類の歴史における極めて重要な瞬間を振り返るべく、個人的なドラマに焦点を当て、観客を浮遊するドラマチックな旅へと誘っている。」
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