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1987、ある闘いの真実のkekqのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.1
1987年韓国、崩壊寸前の軍事政権と激怒する民衆による血まみれのターニングポイント。芯をとらえた邦題がいい仕事をしている。

すべての映画要素に気合いの入った渾身の社会派サスペンスだが、とりわけ実験的で練りに練られた脚本が素晴らしい。やたら多い登場人物全員にドラマが盛り込まれ、10分おきに主人公が入れ替わるような展開が目まぐるしくも面白い。
「ある闘い」はひとつではなく、ある者は法を守るため、ある者は国を守るため、ある者はささやかな日常を守るため、ある者は組織を守るため、それぞれが異なるレベルで正義を貫く姿が描かれており、きちんと共感できる説得力を持たせているのが本当に巧い。

基本バイオレンスとサスペンスが渦巻く中で、韓流全開のラブコメ要素を突然盛り込んできたのは全部乗せのラーメンにアイスクリームまで乗せられたような気分になったが、最後にはすべてのドラマを一本の事実に集約させており見事に納得させられた。

軍事政権の手先として民衆を踏みにじる警察を巨悪として動いているが、彼らもまた人間であり使命と矜持で武装しつつも疑念と弱さが垣間見えるのが切ない。
これまでまかり通っていた方法が通用しなくなり、これまで言いなりになってきた検察やメディアが露骨に反旗を翻してくる。たとえ自分たちの時代の終わりを自覚していても立ち止まることも振り返ることも許されず、自国民に暴力をふるうことでしかアイデンティティを保てないジレンマもしっかりと描かれていた。

多分にドラマチックな誇張はあるが、隣の国の苦難の歴史をより深く知りたいと思わせる力強い映画だった。
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