もめん豆腐

志乃ちゃんは自分の名前が言えないのもめん豆腐のネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

原作は押見修造先生。何も知らずに観てたのだけど、終わって納得の素晴らしさだった。前情報ゼロで観た為、志乃ちゃんが何歳なのか、なぜ名前が言えないのかを知らなくて、理由が吃音だとわかって以降、自分が所属していたサークルの先輩のことを思い浮かべていた。今思えば、先輩も吃音だった。当時吃音を知らなくて、先輩はなんでこんな風に話すのかな〜なんて思ってはいたけど、話し終わるのを待ってればいいだけだから、他の人と同じ様にバカな話をいっぱいした。けっこう仲も良かった。
先輩「あてくしさ〜、お前最近太ったな〜、やらせろよ」
なんて言われて
あてくし「サイテー👎サイテー👎」
なんて話てたっけ。もちろんサークルの人で彼の話し方について何か言う人はいなかった。でも一人だけあてくしに
「先輩はなんであんな話し方するの?」
と尋ねてきた同学年がいて
「本人に聞けば?」
と答えると
「イヤだー、本人に聞けないから(あてくしに)聞いてるんじゃーん」
とクソうざい女はいたものの、この高校のように、笑ったりマネしたりするような幼稚な人はいなかった。知らなくても、高校生くらいになれば、これがのっぴきならない状態だって気づくはず。いや、気づかないことが年齢相応ではないよ。それに吃音はマネしちゃダメな理由が別にもあって、昔、吃音の友達のマネしてからかってた男が、本当に吃音症になってしまって、殺人事件を起こした事例もあるのでね。意地悪はダメ🙅絶対。
観ていると、一生懸命話そうとする志乃ちゃんの姿にいろんな感情が湧き上がってきて説明がつかないんだけど、苦しくて苦しくて堪らないし、担任の無理解にも腹が立って仕方なくて😟リラックスしろって練習させるのって完全に逆効果なのに、こういう教師いるよな〜、今でもムカつくわ。それでも加代ちゃんと仲良くなれた時の、あの嬉しさったら。観ていて保護者の感覚になったり、高校生の頃に戻ったり、忙しかった。
二人が通りで歌って演奏するのも、加代ちゃんが一人で文化祭に出たのも、どちらも勇気に胸が熱くなった。誰かの勇気が誰かを鼓舞することってあるよな、と思ったり。
この映画でも蒔田彩珠ちゃんが、いい演技をしてて、南沙良ちゃんとの化学反応の結果がとてもとても良かった。
この話は押見修造先生の実体験が原作になっているようで、先生も吃音で悩んだらしい。先生は『血の轍』でも実体験にヒントを得てマンガに昇華させていて、同じく過干渉に悩まされた者として心から尊敬する。大人になると自分で自分を癒やさなくてはいけない業まで背負わされて、厄介な人生よ…。
そうそう、映画の舞台の静岡県も雰囲気が良くて、潮風の匂いを感じることが出来たの。地方都市の少し鄙びた街並みも、自分が10代だった神奈川県を思い出した。こんな感じだよね。
ラストがわかりやすく上手くいってはいなかったのもリアルだったものの、少しだけ楽しそうな予感をさせてたことも、心があたたまったな。傷ついた分だけ成長するといいね。
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