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ある少年の告白のエスのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
4.4
キリスト教の牧師の息子として厳格な信仰の価値観の下育てられたジャレッドがある出来事を機にゲイであることに気付き、それを知った両親は受け入れられずに矯正治療施設へと送る。口外禁止のその施設の療法はあまりにも馬鹿げており、信仰心を抱きながらも自分を偽らなきゃいけないことへの不信感を募らせ、やがて彼の本当の生きる道を見出していくというお話。

ホモフォビック描写があまりにもきつくみるのを止めたいと何度も思いながらも、ルーカスヘッジズの熱演に繋ぎ止められ、彼に完璧に感情移入していたからこそ、ニコールキッドマン演じるママのあのシーンのカタルシスはとんでもなかったし、あの瞬間一気に救われたと思えた。

宗教に対して、本当に居たかどうかなんて誰も知りもしないのに御託を並べ自分たちのヘイトや差別を正当化したいだけの洗脳集団だと思っている自分にとってこの作品はまさにという感じであったし、ノーマルや当たり前などなく、傷つけなければそれぞれみんな違いがあり、ダメなことなんてないんだと、全てはあなたの選択に、自由意志に委ねられているよ、と大切なことを思い出せたので改めて生き返ったような気がしています。

楽曲提供までしてるトロイシヴァン、どうしても演じたかったというグザヴィエドラン、熱演ながら監督まで担ったジョエルエガートン、レッチリのフリー、キーとなる父親のラッセルクロウ等あまりに豪華な演者陣も魅力的です。

前情報全く入れずにみたので原作者のガラードコンリーの存在を知り、実話なのかこれ…と驚愕したし、サイクスの最後にも本当に心を掻き乱された。凄まじい。

これだけ散々悲惨な物語を披露した後に提示されるアメリカの未成年への矯正治療が認可されたという事実が一番きつい。これからも沢山LGBTQ+コミュニティに関する物語を誠実に伝える作品が必要だし、救われるべき人生が数え切れない程ある。この胸の痛みを忘れないで生きてたい。
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