SY3KR

ある少年の告白のSY3KRのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
4.0
俳優のジョエル・エドガートンが、1970年代に端を発する転向療法(コンバージョン・セラピー)に焦点を当てて制作した人間ドラマ。

ジョエル・エドガートン自身が演じたサイクス神父は医者でもなければ、カウンセラーでもない。しかし、権力や地位があるかのように見せかけるだけで人は簡単に心を支配されてしまう。カルト教団の洗脳に近いやり口に、心底ゾッとさせられた。

この映画のもう1つのテーマは、親子間の対立と関係性の修復だ。ジャレッドの暮らすアーカンソー州はアメリカ南部に位置し、共和党が多数を占める保守的なエリアである。当然、教会の牧師である父マーシャルが、同性愛を認めるはずはない。

複雑なのは、父親の信条それ自体も決して否定されるべきではないという点だ。聖書の教えが全てと信じてきたマーシャルにとって、それを否定することは彼自身の否定に他ならない。だが、同性愛を受け入れられるかどうかと、実の子供を愛せるかどうかは全くの別問題だろう。矯正施設に送り込んで、無視を続けるだけでは何の解決にもならない。

この歪で今にも壊れそうな家族を、ルーカス・ヘッジズ、ラッセル・クロウ、ニコール・キッドマンの3人が素晴らしいパフォーマンスで演じきった。とりわけ、箱入りで世間知らずなお嬢様の風貌をセリフの発し方1つ・所作1つで醸し出して見せたニコール・キッドマンの熱演は本作の白眉となっている。

確かに展開は地味だが、背景・脚本・演出・パフォーマンスのいずれも見応えがあるし、このような問題が現実にあったことを知るためにも見ておくべき1作だと感じる。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:80%
・観客支持率 :74%
「脚本・監督・出演を務めるジョエル・エドガートンの共感性によって支えられ、本作はこの複雑で力強いドラマもまた、善意によって舗装されていることを証明している」
SY3KR

SY3KR