うめまつ

Love,サイモン 17歳の告白のうめまつのレビュー・感想・評価

Love,サイモン 17歳の告白(2018年製作の映画)
3.4
全角がまぁるく面取りしてある滑らかな口当たり。星の形の人参入りクリームシチューみたいに優しさが整った世界。ちょっと身を引いて見れば、たちまち出来すぎた話のようにも思える。サイモンが恵まれ過ぎてて羨ましいくらいだ。出て来る子達が(一人を除いて)みーんな可愛らしくて「優しい物語の中の人」というのがビジュアルでわかって安心する。

当たり前だけど、あんなに素敵で理解ある家庭環境でもカミングアウトするのは勇気がいるんだな。例え直接的に差別を目撃しなくても、異性愛者による異性愛者のための異性愛社会が隅々まで構築されている弊害だよね。若い子達に不要な荷物を背負わせてしまって申し訳なくなった。異性愛者はそもそも周りの理解もカミングアウトも必要なく生きてるんだから、社会の仕組みそのものを変えなくては本当の解決には至らないのだ。

『THIS IS US』で両親や環境に恵まれて素直に育ち、自分が劇で白雪姫を演じることに全く違和感を抱いてない黒人の女の子が出て来て、素晴らしいなと感心したんだけど、目指すべきところはそこなんじゃないかなと思った。ちょっと的外れだけどその流れから、小学生の時クラスの劇で『眠れる森の美女』を演った事を思い出した。オーロラ姫は男の子が、王子役は女の子がそれぞれ立候補して演じた。2人がジェンダーに悩みを抱えてたかどうかはわからないけど、その配役を他の子が揶揄したり、親が異議を訴えたりはしなかったと思う。ピンクのドレスを着た男の子も、カボチャのパンツを履いてる女の子も、何の屈託もない笑顔で写真に収まってる。そんなことが何処でもいつでも当たり前になれば良いのにな。因みに私はそのお姫様を演じた男の子の事が好きだった。王子役に立候補しなかった事が悔やまれてならない。
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