ミーハー女子大生

カメラを止めるな!のミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.5
【解説・あらすじ】
2018年公開時のキャッチフレーズは「最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。」
「無名の新人監督と俳優達が創ったウルトラ娯楽作」。
予算300万円のインディーズ映画ながら、SNSの口コミ効果で全国公開へと拡大し、国内及び海外の映画賞を数々受賞。
2018年の邦画興行収入ランキング7位(31.2億円)というヒット作品となった。

人里離れた山の中で、自主映画の撮影クルーがゾンビ映画の撮影を行っている。
リアリティーを求める監督の要求はエスカレートし、なかなかOKの声はかからず、テイク数は42を数えていた。
その時、彼らは本物のゾンビの襲撃を受け、大興奮した監督がカメラを回し続ける一方、撮影クルーは次々とゾンビ化していき…。

【感想】
何ともすごい映画である。
作品構成は一見単純だ。
ゾンビ映画をワンカットで撮りそれを生放送する企画と、その作品の制作過程を1ヶ月さかのぼってコミカルに描く。
ただこれだけなのだが、そのディテールまで覗き込むと、実はこれが一筋縄ではいかない。

まず驚かされるのは、冒頭延々と続くB級ゾンビ映画。
これが本作の幹となる劇中劇なのだが、実に37分間ワンカットで見る者に攻めてくる。
ワンカットだからシーンによっては雑に見えたり、どうにも腑に落ちないシーンなど、観客は様々な印象を受けるだろう。
このワンカット映画がエンドロールを迎えると、本作が本格的に始まるという寸法だ。

さかのぼること1ヶ月前。
このワンカット映画の企画が立ち上がり、監督をはじめとするスタッフ陣、そして出演者達が決まっていくが、さらに重要なのは、監督の妻と娘…。
そして迎えるクランクイン…。

30分のワンカット映画を今度はその裏側から、つまりスタッフとキャスト側から観客達は覗き見るのである。
もう、そこからは冒頭の37分間で抱いた疑問や腑に落ちなかったことが、気持ちよく解決していき、一種の快楽に近い感覚を覚えるほどだ。

本作を一言で言えば、ゾンビ映画を劇中劇に添えたドタバタコメディー。
しかし、本作が持つ緻密さは、凡百の映画を簡単に凌駕する。
これは偏に脚本が非常によく練られているからに他ならない。
そして巧みな編集が見事なスピード感を生み、観客を至福の空間へ誘ってくれている。

東宝でも松竹でも東映でもなく、マイナーなインデペンデント・プロダクション、そして制作費は300万の低予算。
それでも、完成度の高い映画は作れることを本作は見事に証明している。

文句なしの傑作である。

ストーリー 5
演出 5
音楽 3
印象 4
独創性 5
関心度 5
総合 4.5

49/2023