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夜の大捜査線のKSatのレビュー・感想・評価

夜の大捜査線(1967年製作の映画)
3.9
ノーマン・ジュイソンの訃報を聞き、そういえば「月の輝く夜に」しか観てなかったため、観てみた。

公民権法が成立して3年後に製作されたこの映画は、今観ると、なかなか厳しいモノがある。黒人であるシドニー・ポワチエは、黒人であるだけで逮捕され、しかしフィラデルフィアから来た刑事だとわかると都合良く利用される。にもかかわらず、全く抵抗をせず、あくまで終始白人のような身なりで紳士的に振る舞う。この映画や「招かれざる客」における彼のキャラクターは、未だに多くの黒人から反感を買っているらしいが、、、正直、普通にカッコ良いし、いかなる形であれ黒人が主役張る先駆けになったのだから、素直に凄いと思う。

ただ、この映画の場合、ポワチエよりもロッド・スタイガーの個性が圧倒的に勝ってしまっている。自らも人種差別的で権力を振りかざし、主人公の味方とも敵ともつかない強烈なキャラクターは、今の価値観では完全にアウトだけど、ものすごくインパクトがあった。

ノワール的なプロット自体はそこまで目を見張るものはないものの、意外とタイムリミットのサスペンスでもあって面白い。南部の雰囲気を全面に出したハスケル・ウェクスラーの温度を感じさせる撮影、クインシー・ジョーンズのスコア、レイ・チャールズのテーマと、色々素晴らしい。今も南部のド田舎はこんな感じなのかな。
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