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夜の大捜査線のmikanmcsのレビュー・感想・評価

夜の大捜査線(1967年製作の映画)
4.0
最近忙しくてあまり映画を観れてなかったのですが、ノーマン・ジュイソン監督が亡くなったとのニュースを聞き、追悼の意を込め代表作である本作を鑑賞。小学生の頃に家の白黒テレビで父親が観ていたのを一緒に観たおぼろげな記憶があります。今回、訃報を聞き何十年かぶりに見直しましたが、今見てもまったく古びておらず、後世の南部BLM系映画群の「原点」に触れた気分です。(昔の映画ですが配信の映像もとても綺麗でした)

本作は米国南部モノ、警察モノ、ミステリー、と様々な顔を持っていますが、何よりもバディものとして第一級。白人警察署長ロッド・スタイガーとエリート黒人刑事シドニー・ボワチエが始めは敵対しつつも、次第にお互いを認め合うようになるところが定番だけどジーンと来ます。この鉄板パターン、「グリーンブック」始め本当に後世のいろんな映画に引き継がれていますよね。ロッド・スタイガーなら「夕陽のギャングたち」も同テイストかな。

本作は南部のエゲツナイ黒人差別の実態も描いてますが、差別の告発やモラルを声高に訴えるものではなく、映画としてはあくまで「殺人事件の捜査」という「エンタテインメント」に軸足を置いているのがいいですね。(原作の映画化だから当然か)

アカデミー賞を獲ったロッド・スタイガーは当然だけど本当にうまいです。黒人なんて認めたくない/でもコイツの凄さは認めざるをえない/でもそれをストレートに言葉にするのも憚られる、という複雑な心の葛藤を、セリフ少なめに表情だけで味わい深く演じておられました。ラスト、駅で「元気でな」と一言言ってニコッと笑うだけで観客にすべてをわからせるの、さすが。それともあれは監督のノーマン・ジュイソンがうまいのか。シドニー・ボワチエは本作では優等生過ぎて割喰っちゃいましたね。

レイ・チャールズの主題歌も雰囲気あって最高。忘れてたけど本作の音楽はクインシー・ジョーンズだったんですね。

そしてエンディングのカット。列車に乗るバージル・ティップスの姿を窓の外から撮って、次第に上空に大きく引いて列車全体を映す絵。このカットもミッション・インポッシブルはじめ後世のいろいろな映画にパクられてますね。今はドローンやCGで撮影簡単でしょうけど、当時はヘリとか使って大変だったたんだろうなあ。

最後になりますがノーマン・ジュイソン監督、「シンシナティ・キッド」「華麗なる賭け」「ジーザス・クライスト・スーパースター」「屋根の上のバイオリン弾き」「ローラーボール」... 若き日に見た素晴らしく懐かしい名作群をありがとうございました。97歳没だそうですから大往生ですね。R.I.P.
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