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スターリンの葬送狂騒曲のYAJのネタバレレビュー・内容・結末

スターリンの葬送狂騒曲(2017年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

(緊急事態宣言下、落穂ひろい鑑賞)

『スターリンの葬送狂騒曲』は見落とし作品としてリストしてあったもので、この機会に観てみた。観ているうちに、これどっかであった構成だなあと、思い出したのが、三谷幸喜作の『清須会議』だった。
 片や、ソ連時代は独裁者スターリン、もう一方は戦国時代の日本で本能寺の変後の織田家世継ぎ選び。

 『清須会議』は原作を書籍で読んでいて、モノローグ仕立てにしたところが見事だと思ったもの。これを映画でやるのは無理があるかもと映画作品のほうはパスしていた。
 『スターリンの~』は独裁者の死後の政権内部の抗争を描き、ロシアで上映禁止となり話題なったらしい。よう知らんけど。
 けっこうコメディタッチで、あの暗黒の時代を面白く描いているのかなと思ったけど、なかなか凄惨なシーンも多くて、かなりブラック。そのあたりの脚色具合が本国では嫌われたか?(製作はイギリス)

 もっとコメディにタッチに振っておけばどうだったろうか。くだらない政争をコメディで笑い飛ばす諧謔と、史実としてあった粛清の恐怖を後世に伝えるバランス。第三者的には悪くないけどね。 そんなことを思ったあたりで、三谷幸喜作の『清須会議』を思い出したと、そんな流れ。

 『清須~』も、結果こそ史実に沿ったものだが、織田家四天王の後継を巡る暗躍を、わずか数日の間の清須城内での出来事として脚色し、三谷お得意の密室シチュエーション・コメディとしているところがお見事。日本の俳優そろい踏みの様相で、マンネリとはいえそのオールスターぶりも楽しい。
 秀吉が担ぐ三法師が織田家の家督を継ぐことが決定した場面で大団円だったという記憶だが、映画のほうはその後の話がやや冗長に続く。小説のほうはモノローグなので、わりと短めに各人の思いが語られていたのを絵として残すとなるとこうなったという感じだろうか。とはいえ、お市(鈴木京香)、松姫(剛力彩芽)による女の執念というのは、終盤の演技で見事に表現されていたかなと思った。

 で、本作『スターリン~』のほうは、フルシチョフ、ベリヤ、マレンコフと男中心で、スターリンの娘スヴェトラーナや、架空の人物であろうピアニスト・マリヤを演じたオルガ・キュリレンコの起用も、あまり活かせてなかったよなー。あの時代を描いていたからというのもあるが、三谷作品のほうが男女ともに役者が光っていた印象。

 とはいえ、スターリン死後の政権争いなんて、当然あったろうとは思ってはいても、ここまでの登場人物を想定して、個々人に思惑があったことに思いも及んでいなかったので、勉強になったし、面白かった。

 NKVD最高責任者のラヴレンチー・パーヴロヴィチ・ベリヤを演じたサイモン・ラッセル・ビールが、ゴルバチョフに酷似していてややこしい! どこかでゴルビーを演じてたりしないのかな?(笑)
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