ベルサイユ製麺

北朝鮮特殊部隊・地獄の密令027号のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.8
ここ数年で一番の衝撃を受けました!
多分初めて観た北朝鮮映画です。こんなタイトルですが劇映画で、ごくシンプルなストーリー(韓国に忍び込んで大暴れする)のアクション映画です。エンターテイメント兼プロパガンダ映画で、未見の作品を引き合いに出すのもなんですが『永遠の0』みたいな物だと思います。
制作は30年程前なのだそうですが、見た目はもっと古びた感じで、ジャッキーがまだ脇役をやっていた頃の香港映画が近いテイストだと思いました。とてもプリミティブで、ツッコミどころ(あまり好きな言葉では無いですが)以外の方が少ないような完成度です。なので最初はニヤニヤしながら見てたのですが、途中からどうも笑っていい様な物では無い気がしてきました…。
この作品、どんな思いをして作ったのだろう。きっと映画を愛する人達が、映画を撮れるなんて一生に一度有るか無いかという環境で、でもやってみたい事は無尽蔵。予算や機材や表現上の制約と戦いながら、「香港のスターがこんな動きしてたよ」「早回しすると勢い出るね」「北国の帝王って知ってる?」なんて語り合って、血や汗に塗れながら誰が観るともしれない映画を作り上げる。なんてピュアな創作活動なんだろう。(想像ですけどね。)
仕事だからと、興味も無い少女漫画を出来るだけ無難な造りで実写映画化する様な“作業”とはまるで違います。ツッこむならこっちね。
映画を作るという事。それを観る事。触れて考える事。それら全てへの根本的な態度を、今一度考え直さざるを得なくなる様な貴重な鑑賞体験でした。映画そのものの出来不出来はさして大きな問題では無いと思います。(実際、他のレビュアー様達の感想も概ね好意的に感じられます。)
この作品を作った方達は、今どうしているのだろう。彼等の特殊部隊が、取り敢えず日本まではたどり着いたって事を教えてあげたいな。配給会社さん、本当に素晴らしい仕事です。感謝。