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Tubelight(原題)のBaadのレビュー・感想・評価

Tubelight(原題)(2017年製作の映画)
4.2
『バジュランギおじさん〜』とPhantomという手の込んだ映画の後で、カビール・カーン監督が撮ったサルマン・カーン家のファミリー・ムービーという感じの位置付けの映画なのかしらん。静かな映画でしたが、私はこれ、落ち着いてみられる上、メッセージもくっきりしていて結構好きでした。

スタッフが一流どころな割には大ヒットしたわけでも日本で映画祭公開されたわけでもないけれど、いかにもこの監督らしい映画。サルマン・カーンとソヘイル・カーンの実際の兄弟が中印国境紛争に翻弄される兄弟を演じています。

また、名優オーム・プリーさんの遺作でもあるんですが、若い頃、英国との合作映画『ガンジー』でガーンディーに反論して窮状を訴える民衆の男という印象的な役を演じたオームさんが最後に主人公にガンディー主義を教える叔父さん役、というのも味わいが深く、時の流れを感じます。

靴を首から下げたサルマン・カーンの写真が可愛らしくて気になっていた映画ですが、ひょんなことからアマプラで英語字幕で見られると知り、早速見てみました。

インド独立から1962年の中印国境紛争までの時代のヒマラヤの小さな村に住む仲良しの兄弟の物語。
兄は軽い知的障害があるらしくTubelight(蛍光灯)と呼ばれている。やがてしっかり者で喧嘩も強い弟が生まれ、周囲と弟に守られてすくすくと育っていく。

国境を守るために兵士が募集され、若者はこぞって志願、弟も兄を残すことが心配ながらも、恩給で生活が安定すると助言を受け志願する。

しかし戦争は激しくなり、人的損害は凄まじく、弟も捕虜となって行方知れずに。

ここで、サルマンが弟を探しにいく、ということにはならず、出征した若者たちを待つ村の生活が描かれていきます。

インド国籍を持つ家族でありながら、父親は中国系ということで収容され、村に移ってきた中国系インド人の家族とも叔父の教えで仲良くなります。

子供の頃からのいじめっ子はその家族に辛く当たりますが、とはいえさほど悪人ではない。この役を最近配信ドラマ・映画で活躍が目覚ましモハマッド・ジーシャーン・アッユーブが演じています。演技が自然で程よくイケメンなので、ついサルマンよりしっかり見てしまいます。

動きの少ない映画ですが、ガンディー主義や恐れを克服して最善を尽くして待つことの大切さを描いている良い映画で、2010年代終わりごろからヒットするようになった愛国映画とはくっきりと一線を画していてその辺は感心してしまいます。

ダンスシーンの曲”Radio"はどこかで聞いた感じのする良いメロディーですが、この映画のオリジナルなのか、古い曲のカバーなのか気になりました。
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