ベルサイユ製麺

いつも心はジャイアントのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

いつも心はジャイアント(2016年製作の映画)
3.5
グループアイドルのメンバーの自己紹介みたいなタイトルです。「ジャイアントー!」は皆様ご一緒にご唱和下さい。

未確認の奇病に冒された男・リカルドが、ペタンクというスポーツを通して社会と関わり、選手権優勝という目標に向かって邁進する姿を描きます。リカルドを産んだ母は精神を病み、今は施設で暮らしています。リカルドは母と暮らしたい…。

主人公リカルドを演じる男性は恐らくプロテウス症候群で背も小さく、何か他の障がいも有るのかもしれません。台詞を殆ど発しないのは役柄の上でのことなのでしょうか。実際の障がい者の方も多く出演していて、そもそもプロの役者は出ていないような感じも有ります。所謂“演技を見せる”タイプの作品では無いのだと思います。
撮影が凄くホームビデオっぽいのですが、モキュメンタリー的な効果を狙った訳ではなく、制作環境の問題なのでしょう。劇伴もデジタルシンセ一台で完パケた様な響きです。

…自分はなーにを書いているのだ。
はっきり言うと、意外にも特段感動する様な作品では無くて、かと言って娯楽作品にもなり得ていない、宙ぶらりんな作品に思えました。
リカルドは作中所々で空想に耽ります。現実では小さな彼が、雲を突き抜ける様な大男になって、ビルの谷間を闊歩したり、お母さんを窓から連れ出したり。タイトルはここから来てます。このシーンに限っては娯楽度が高く、誰が見ても楽しいのでは無いかしら?構造的には『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に近いのかもしれません。辛い時ほど楽しい事を考える。
自分は理屈を超えてこういう作品が好きなのです。欠点に見える所も含めて。だから、お勧めの仕方が分からないな…。

空想、みんなしますよねぇ?そうでもしないと生きていけないっすよ。

劇中、彼の姿を揶揄う街のバカが出てきます。彼の姿より、私の心の方がずっと奇妙なのに、私は街に溶け込めてしまう。この世はなんと不公平なのか。

空想の中の自分は、誰のことも思いやる事が出来て、誰も傷つけない、スーパーマンみたいな、普通の人なのです。